制度・税金2026年(令和8年)税制対応公開日: 2026年8月18日

空き家売却の税金はどうなる?譲渡所得税の計算から3,000万円控除・取得費加算の使い分けまで

空き家を売って利益が出ると「譲渡所得税」として約20%(長期)の税金がかかります。一方、相続した空き家なら3,000万円特別控除相続税の取得費加算という強力な特例が使える可能性があります。本記事では、税金の種類ごとの計算方法、取得費が分からない場合の対処、特例同士の選択適用の考え方を、シミュレーターと要件診断付きで整理します。

1. 空き家売却でかかる税金の全体像

空き家の売却で税金の対象になるのは、主に売却益(譲渡所得)に対する「譲渡所得税」です。所得税法第33条に基づき、譲渡所得は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算され、この金額がプラスの場合に課税されます。

税金・費用計算方法目安
譲渡所得税(所得税+住民税等)譲渡所得 × 20.315%(所有5年超・長期)/ 39.63%(5年以下・短期)譲渡所得1,000万円ごとに約203万円(長期)
印紙税(不動産売買契約書)記載金額に応じ本則税額(2026年3月31日までの作成分は租税特別措置法第93条の軽減税率)5,000万円超1億円以下: 3万円 → 1万円
登録免許税(抵当権抹消登記)不動産1個につき1,000円(抹消登記)住宅ローン残債がある場合に必要
固定資産税(売却後の管理面)1月1日時点の所有者に年額課税。建物解体で住宅用地特例が外れると土地税額は約3〜4倍引渡時の日割り精算が実務慣行

出典: 国税庁「No.1440 譲渡所得」(所得税法第33条)、租税特別措置法第93条、地方税法第349条の3の2

💡 空き家売却の税金は「取得費」と「特例」でほぼ決まる

税額を左右する最大の要素は取得費(いくらで取得したか)です。古い空き家では購入時の契約書が見つからず、売却価格の5%を概算取得費とせざるを得ないケースが多く、その分譲渡所得が大きくなります。さらに、相続した空き家なら3,000万円特別控除(租税特別措置法第31条の2)か相続税の取得費加算(同法第39条の2)のどちらか一方を適用できるため、この使い分けの試算が節税の中心になります。

2. 税額シミュレーター

売却価格・取得費の有無・所有期間・相続状況を入力して、譲渡所得の計算過程と税額・特例の節税効果を確認できます。

所得税法・租税特別措置法 準拠

空き家売却の税額シミュレーター

売却額・取得費・相続状況を入力すると、譲渡所得の計算過程と税額・節税効果をその場で確認できます。

300万円1億円
② 取得費(購入時の価格)

5年超 → 長期譲渡所得(20.315%)

計算過程

譲渡価格(売却額)
2,500 万円
− 取得費(概算5%)
−125 万円
− 譲渡費用(仲介手数料等)
−150 万円
= 譲渡所得
2,225 万円
− 特別控除(3,000万円/人)
−2,225 万円
= 課税譲渡所得
0 万円
× 税率 20.315%(長期譲渡)
= 譲渡所得税額
0 万円
譲渡所得税額(特例適用後)0 万円

特別控除による節税額: 452 万円
(適用なしの場合: 452 万円

※所有期間は相続開始の日から通算します(所得税法第60条)。計算は概算です。印紙税・登録免許税・仲介手数料等は含みません。正確な金額は税理士への相談をお勧めします。

3. 取得費が分からない場合の対処 — 「5%概算」のリスクと実額立証

取得費とは、被相続人が家屋・土地を購入したときの代金に、設備改良費・登記費用等を加えたものです。相続人はこの取得費を引き継いで計算します(所得税法第60条)。売買契約書等で取得費を証明できない場合、譲渡価格の5%を概算取得費として計算することになります(所得税法基本通達38-1)。

⚠ 概算5%計算のリスク

例: 3,000万円で売却 → 概算取得費は150万円。譲渡費用200万円なら譲渡所得は2,650万円となり、長期譲渡で約538万円の税額です。実際の購入価格が1,000万円だったなら譲渡所得は1,800万円に減り、税額は約366万円 — 差し引き約172万円の違いになります。

✓ 実額立証のアプローチ

  • ・当時の売買契約書・重要事項説明書・建築請負契約書
  • ・固定資産税評価額通知・登記費用の領収書
  • ・住宅ローン返済表・通帳の出金記録
  • ・日本不動産鑑定協会「市街地価格指数」・国土交通省「不動産価格指数」による推計

出典: 国税庁「No.1440 譲渡所得」(取得費の意味・概算取得費)、所得税法基本通達38-1

4. 3,000万円特別控除と相続税の取得費加算 — 選択適用の考え方

相続した空き家の売却で使える主な特例は2つあり、同一の譲渡について併用できません(選択適用)。どちらが得かは「譲渡所得の大きさ」と「支払った相続税額」の双方で決まります。

比較3つの課税パターン

課税パターン別の税額イメージ

特例なし・3,000万円特別控除・相続税の取得費加算の3パターンで、計算方法と税額感覚を比較します。

特例なし(長期譲渡)

基本形

3,000万円特別控除(相続空き家)

主力特例

相続税の取得費加算

選択適用

選択の目安

  • 譲渡所得が3,000万円未満(相続人1〜2人)なら、特別控除で課税譲渡所得が0円になるため控除特例が有利になることが一般的です。
  • 相続税を多額に支払った場合(土地評価が高い遺産構成など)は、取得費加算で譲渡所得そのものを圧縮する方が税額が下がることがあります。
  • 取得費加算の適用期限は相続開始から3年以内(2024年4月1日以後の相続は3年10か月以内)。特別控除も3年内が要件のため、いずれにしても相続後できるだけ早い売却判断が選択肢を残します。

出典: 租税特別措置法第31条の2・第39条の2、国税庁「No.3167 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」

5. 3,000万円特別控除の要件診断

3,000万円特別控除(適用期限: 2027年12月31日までの譲渡)は、家屋の建築時期や空き家期間、譲渡対価、期限など複数の要件のすべてを満たす必要があります。6つの質問で適用可能性を確認できます。

ELIGIBILITY CHECKLIST

6つの要件 セルフチェック診断

相続空き家の3,000万円特別控除(2024年改正対応)を適用できるか、質問に答えて確認します。

回答状況: 0 / 6 項目0% 完了
  1. 1

    売却する家は【相続または遺贈】により取得したものですか?(生前購入した自宅は対象外)

    本特例は「被相続人の居住用財産」を相続等で取得した場合の制度です。

  2. 2

    家屋は【昭和56年(1981年)5月31日以前】に建築された一戸建てですか?

    区分所有建物(マンション等)は対象外。登記事項証明書の表題部「新築年月日」で確認できます。

  3. 3

    相続開始の直前に、被相続人がこの家屋に【一人で居住】していましたか?

    要介護認定を受けて老人ホーム等に入所していた場合も、一定の要件(入所直前まで一人暮らし等)で対象になります。

  4. 4

    相続開始から売却まで、この家屋を【誰も居住・賃貸・事業用に使用していません】か?

    相続人が一時的に居住したり賃貸に出した場合は対象外です。

  5. 5

    売却価格(土地+建物の合計)は【1億円以下】ですか?

    区分して売却する場合も合算した譲渡対価で判定します。

  6. 6

    相続開始から【3年を経過する日の属する年の12月31日まで】に売却しますか?

    制度自体の適用期限は2027年(令和9年)12月31日までの譲渡です。

6. 売却前から確定申告までの手順

税負担は売却前の資料整理と特例の選択でほぼ確定し、売却後に市区町村の確認書と確定申告で仕上げます。5つのステップで流れを整理します。

実務フロー売却前から確定申告まで

税負担を最小化する「5ステップ手順」

取得費の資料収集から特例の使い分け、確定申告まで、空き家売却の税手続きをステップ順に整理しました。

STEP 1
売却前

取得費・譲渡費用の資料収集

被相続人の売買契約書・登記費用の領収書・固定資産税の課税明細書等を集め、取得費を確定します。資料がない場合はローン返済表・通帳・不動産価格指数等で推計する準備をします。

📌 実務上の重要ポイント
  • 取得費が証明できれば、5%概算計算より譲渡所得を圧縮できます。
  • 解体・測量・仲介手数料等は譲渡費用として差し引けるため、領収書を保管します。
💡 この段階の整理が税額に最も大きく影響します
STEP 2
売却前

特例の要件確認と使い分け

3,000万円特別控除(建築年・空き家期間・1億円以下・3年以内等の要件)と相続税の取得費加算(相続税納税あり・3年以内等)の適用可否を確認し、試算して有利な方を選択します。両者は併用できません。

📌 実務上の重要ポイント
  • 3,000万円特別控除は2027年12月31日までの譲渡が対象です。
  • 市区町村の確認書が必要なため、要件は売却前に確認しておきます。
💡 選択適用:試算で税額の低い方を選ぶ
STEP 3
売却時

売却契約の締結・引渡し

仲介手数料・印紙税(軽減税率対象)等の費用を見込み、買主側解体特約や更地渡しの条件を整理して契約・引渡しを行います。共有名義の場合は持分に応じた各自の譲渡所得を確定させます。

📌 実務上の重要ポイント
  • 譲渡対価1億円以下の確認(3,000万円特別控除の要件)。
  • 買主解体特約では「翌年2月15日までの解体完了」を契約に明記します。
STEP 4
売却後

市区町村の確認書交付申請

3,000万円特別控除を適用する場合、家屋所在地の市区町村へ「被相続人居住用家屋等確認申請書」を提出し、確認書の交付を受けます(電気ガス閉栓証明・除票住民票等の添付が必要)。

📌 実務上の重要ポイント
  • 審査に時間を要する場合があるため、売却後すぐに申請します。
  • 買主解体の場合は解体完了証明書等も取得します。
STEP 5
申告

確定申告(翌年2月16日〜3月15日)

確認書・売買契約書・譲渡所得の内訳書等を添付して確定申告します。税額が0円になる場合も申告必須です。e-Taxでの提出も可能です。

📌 実務上の重要ポイント
  • 特例適用の申告漏れは無申告加算税・延滞税の対象になります。
  • 譲渡損失の損益通算・繰越控除を利用する場合も申告が必要です。
💡 税額0円でも申告は必須

📋 確定申告の主な添付書類一覧

  • 被相続人居住用家屋等確認書(3,000万円特別控除を適用する場合・市区町村発行)
  • 不動産売買契約書の写し(譲渡対価・引渡日の確認)
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼)
  • 取得費を証明する資料(売買契約書・領収書等。概算5%の場合は不要)
  • 譲渡費用の領収書(仲介手数料・測量費・解体費等)
  • 相続税の申告書・納税額証明(取得費加算を適用する場合)
  • 電気・ガスの閉栓証明書等(空き家であったことの確認資料)

7. よくある質問

譲渡所得税の仕組みから固定資産税・損失の扱いまで、空き家売却の税金についてよく寄せられる質問に回答します。

Q&A実務の疑問と落とし穴

空き家売却の税金「よくある質問(FAQ)」

譲渡所得税の仕組み、3,000万円控除と取得費加算の使い分け、取得費不明への対処、固定資産税まで実務の疑問に回答します。

A

譲渡所得は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算され、この金額(所得控除後)がプラスの場合に所得税・住民税がかかります(所得税法第33条)。空き家では取得費が不明なケースが多く、売買契約書等が残っていないと売却価格の5%を概算取得費として計算するため、譲渡所得が大きくなり税負担が重くなります。所有期間が5年超なら長期譲渡所得として約20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)、5年以下なら短期譲渡所得として約39.63%です。

📌 要点: 「いくらで買ったか」が分かれば税金は大きく変わります。まず契約書・領収書・登記費用の記録を探すことが出発点です。

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