制度・税金農地法(昭和27年法律第229号)に基づく解説公開日: 2026年8月16日

【2026年版】農地の転用と売却の5条許可とは?3条・4条との違い、手続きの流れと罰則まで徹底解説

農地を宅地や事業用地などに転用する目的で売却するときに必要になる「農地法第5条第1項の許可(5条許可)」。農家に農地のまま売る「3条許可」、自分で転用してから売る「4条許可」との違い、市街化区域の届出制度、農用地区域(いわゆる甲種農地)の扱い、違反時の罰則まで、法令(e-Gov)に基づいて整理しました。

1. 農地売却は3つのルートに分かれる — 3条・4条・5条

農地法(昭和27年法律第229号)は、農地の売却・転用を条ごとに異なる許可制度で管理しています。どの許可が必要になるかは「誰が」「どういう目的で」土地を取得・利用するかで決まります(農地法第3条第1項・第4条第1項・第5条第1項、e-Gov法令検索)。

第3条農地のまま売る

対象:買主が取得後も耕作する(農家への売却・賃借)

手続き:農業委員会 の許可

  • 市街化区域内外を問わず許可が必要
  • 買主の農業経営の見込みが審査の軸(第3条第2項)
第4条自分で転用してから売る

対象:売主が宅地等に転用を済ませて売却する

手続き:都道府県知事等 の許可(市街化区域内は農業委員会への届出)

  • 転用後の宅地としての売買には農地法の許可不要
  • 農用地区域(甲種農地)は原則不許可(第4条第6項第1号イ)
第5条転用目的で現況のまま売る

対象:買主が住宅・事業用などに転用するため現況農地のまま購入

手続き:都道府県知事等 の許可(市街化区域内は農業委員会への届出)

  • 申請書は売主・買主の当事者連署(施行規則第57条の4)
  • 買主の資力・信用と転用後用途の確実性が審査対象

🌾 「5条許可」が使われる典型場面

相続した田んぼや畑を、住宅の建築や事業用地への転用を目的とする買主(不動産会社・建築会社・個人)へ現況のまま売却するケースです。農地法第5条第1項は「農地を農地以外のものにするため…権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない」と定めています。転用の実施主体が買主でも、権利移動と転用が一体である限り5条の枠組みで許可審査が行われます。

2. 5条許可の要件と不許可事由 — どこにある農地かが最大の分かれ目

5条許可は第5条第3項で第4条の申請手続きを準用しており、不許可事由も第5条第2項と第4条第6項で共通の枠組みです。なかでも土地の所在する区域が帰結を大きく左右します。

原則、許可が受けられない農地

  • 農業振興地域の農用地区域内の農地(いわゆる甲種農地)— 第5条第2項第1号イ。ただし土地収用法の事業・農用地利用計画で指定された用途・政令で定める相当の事由がある場合は例外
  • おおむね10ヘクタール以上の一団の農地の区域内、特定土地改良事業等の施行区域内など良好な営農条件を備える農地(施行令第5条)
  • 周辺の他の土地で目的を達成できる場合、買主の資力・信用に欠けると認められる場合など(第5条第2項第2号・第3号)

手続きが軽くなる・例外になる場合

  • 市街化区域内の農地 — 転用および転用のための権利移動は、あらかじめ農業委員会へ届出すれば足りる(第4条第1項第7号・第5条第1項第6号、施行令第3条・第10条)
  • 農地バンク(農地中間管理機構)が届け出て取得する場合 — 3条許可が不要な法定例外(第3条第1項第13号等)
  • 土地収用法等による収用・使用 — 許可を要しない(第5条第1項第5号)

⚠ 無許可の転用・売却に適用される罰則(農地法第64条・第67条・第51条)

  • ・第3条第1項・第4条第1項・第5条第1項の違反 → 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(第64条第1項第1号)
  • ・偽りその他不正の手段による許可取得 → 同一の罰則(第64条第1項第2号)
  • ・法人の代表者等の業務違反 → 行為者と法人の双方に処罰。4条・5条違反に係る部分は法人に1億円以下の罰金刑(両罰規定、第67条第1項第1号)
  • ・違反転用 → 都道府県知事等による工事停止・原状回復等の命令(第51条第1項)

出典: 農地法(昭和27年法律第229号)現行法令(e-Gov法令検索、2026年8月時点の法令条文に基づく)。

3. 3条・4条・5条 ルート診断チェック

実際の売却形態を6つの質問で整理すると、必要な許可(または届出)がどの条文に当たるかが確定します。まずはここで方針を確定させるのが実務の順序です。

ROUTE CHECKLIST

3条・4条・5条 ルート診断チェック

6つの質問に答えると、ご自身の売却形態に必要な許可(3条/4条/5条/届出)が判定されます。

質問 1

土地の現況は【農地(田・畑)】ですか?

登記の地目に加えて、実際に耕作可能な状態かどうかが実務上の判定材料になります(判定は農業委員会)。

質問 2

土地は都市計画上の【市街化区域内】にありますか?

市街化区域内の転用は農業委員会への届出で足ります(農地法第4条第1項第7号・第5条第1項第6号)。

質問 3

土地は農業振興地域の【農用地区域内】(いわゆる甲種農地)にありますか?

農用地区域内の農地の転用は原則不許可です(農地法第4条第6項第1号イ・第5条第2項第1号イ、例外あり)。

質問 4

買主は取得後も【耕作の目的】で利用しますか?(農家への売却)

農地のままの売買は農業委員会の3条許可の対象です(農地法第3条第1項)。

質問 5

【売主側で転用(宅地等への変更)を済ませてから】売却しますか?

自ら転用する行為には4条許可が必要です(農地法第4条第1項)。転用後の宅地としての売買には農地法の許可は不要です。

質問 6

【買主が転用を目的に、現況農地のまま】購入しますか?

転用のための権利移動には5条許可が必要です(農地法第5条第1項)。

あと 6 問回答すると、必要な許可ルートが表示されます。

4. 3ルート手取りシミュレーター

ルートが変わると、売却額だけでなく売主が負担する転用費用と譲渡所得の計算が変わります。3ルートの手取りを計算過程つきで並べて比較できます。

TOOL3ルート手取り比較(農地法第3条・第4条・第5条)

農地売却ルート・手取りシミュレーター

売却想定額と費用を入力すると、「農地のまま売る」「転用してから売る」「現況のまま転用目的で売る」の3ルートの手取りを計算過程つきで比較します。

100万円5,000万円
200万円1億円

測量・造成等の転用関連費用。B ルートのみ控除計に加算します(税務上の取扱いは資本的支出か譲渡費用かで別れます)。

⑤ 取得費

取得費が不明な場合、譲渡対価の5%で計算する概算取得費を使用します(B・C ルート: 75 万円)。

SIMULATION RESULT

3ルートの計算過程と手取り比較

A. 農地のまま売却3条許可(農業委員会)
譲渡収入500 万円
− 取得費(概算5%)25 万円
− 譲渡費用等70 万円
= 譲渡所得405 万円
譲渡所得税(20.315%)82 万円
手取り概算348 万円
B. 売主が転用してから売却4条許可(都道府県知事等)
譲渡収入1,500 万円
− 取得費(概算5%)75 万円
− 譲渡費用等(転用費用を含む)270 万円
= 譲渡所得1,155 万円
譲渡所得税(20.315%)235 万円
手取り概算995 万円
C. 買主に転用させる現況売却5条許可(都道府県知事等)
譲渡収入1,500 万円
− 取得費(概算5%)75 万円
− 譲渡費用等70 万円
= 譲渡所得1,355 万円
譲渡所得税(20.315%)275 万円
手取り概算1,155 万円

※長期譲渡所得税率(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)に基づく概算です。短期譲渡(所有期間5年以下)や各種特例の適用、転用費用の資本的支出該当性により税額は変動します。許可の要否・税務申告の具体的判断は所轄の農業委員会・税務署または税理士にご相談ください。

5. 5条許可の申請手続きの流れと必要書類

5条許可の申請は農業委員会経由で都道府県知事等に対して行い、申請書は売主・買主の当事者連署によります(農地法第4条第2項・第5条第3項、農地法施行規則第57条の4)。

実務フロー区域確認から転用工事まで

5条許可で農地を売却する「5ステップ手順」

区域区分の確認、当事者連署による申請、知事等の許可を経て決済・転用工事までの流れと必要書類を整理しました。

01
準備

土地の現況・区域区分の確認と買主・用途の確定

登記の地目(田・畑等)と現況の確認に加え、農業振興地域の農用地区域(いわゆる甲種農地)と都市計画の市街化区域のいずれに該当するかを市町村の農業委員会・都市計画部局で確認します。買主が耕作を続けるなら3条許可、買主が転用目的なら5条許可と、手続きが分岐します。

📌 実務上の重要ポイント
  • 農用地区域内の農地は転用が原則不許可(農地法第4条第6項第1号イ・第5条第2項第1号イ、例外あり)
  • 市街化区域内の転用は農業委員会への届出で足りる(農地法第4条第1項第7号・第5条第1項第6号)
02
契約調整

売買条件の調整と許可申請書類の準備

5条許可の申請書は売主・買主の当事者が連署します(農地法施行規則第57条の4)。転用事業の内容(設置する建物・施設と道路・用排水等の配置)、買主の資力及び信用を証する書類、転用の妨げとなる権利を有する者の同意書等を取りそろえます。

📌 実務上の重要ポイント
  • 資力及び信用の確認は法定の不許可事由のひとつ(農地法第5条第2項第3号)
  • 土地改良区の地区内にある場合は土地改良区の意見書(意見を求めた日から30日を経過しても得られない場合はその事由書)(農地法施行規則第57条の4第2項第3号)
03
申請

農業委員会経由で都道府県知事等へ許可申請

申請書を農業委員会に提出すると、農業委員会は意見を付して都道府県知事等へ送付します(農地法第4条第2項・第5条第3項準用)。送付までの期間は申請書提出の翌日から起算して40日、都道府県機構の意見を聴く場合は80日と定められています(農地法施行規則第57条の6・第32条)。

📌 実務上の重要ポイント
  • 同一事業目的で30アールを超える農地の転用では、農業委員会が都道府県機構の意見聴取を要する(農地法第4条第4項)
04
決済・登記

許可証の確認後に決済・所有権移転登記

都道府県知事等の許可処分と許可証の交付内容(許可に付された条件・用途)を確認したうえで、残代金決済と所有権移転登記を行います。許可は申請に係る用途に供することが前提の処分であり、目的どおりの利用が審査の対象になっています(農地法第4条第6項第3号・第5条第2項第3号)。

05
転用工事

買主による転用工事の着手・完了

許可後、買主は許可に係る用途へ転用工事を進めます。違反転用(許可なく行った転用や目的外利用)に対しては、都道府県知事等が工事の停止、原状回復等を命じることができる制度があります(農地法第51条第1項)。

⚠ 注意: 無許可の転用・権利移動は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(農地法第64条第1項第1号)、法人には1億円以下の罰金刑の両罰規定(同法第67条第1項第1号)があります。

📋 5条許可申請の主な添付書類(農地法施行規則第57条の4・第30条)

  • 許可申請書(売主・買主の当事者連署)
  • 土地の位置を示す地図および土地の登記事項証明書
  • 設置しようとする建物・施設と、それを利用するために必要な道路・用排水施設等の位置を明らかにした図面
  • 買主(権利取得者)の資力及び信用があることを証する書面(資金計画に基づくもの)
  • 転用の妨げとなる権利を有する者の同意を証する書面(該当する場合)
  • 土地改良区の地区内にある場合の土地改良区の意見書(該当する場合)
  • 買主が法人の場合の定款・寄附行為の写しまたは法人の登記事項証明書

6. よくある質問・実務上の注意点

許可の使い分け、市街化区域の届出、罰則、相続した農地の第一手まで、農地法の条文に基づいて回答します。

Q&A許可の区分から罰則まで

農地転用・売却の「よくある質問(FAQ)」

3条・4条・5条の使い分け、市街化区域の届出、無許可転用の罰則、相続した農地の第一手まで、農地法の条文に基づいて回答します。

A

農地法第3条第1項の許可(いわゆる3条許可)が必要です。農地について所有権を移転する場合、当事者が農業委員会の許可を受けなければならないと定められています(農地法第3条第1項)。市街化区域内かどうかを問わず許可制度が適用されます。なお、農地中間管理機構(農地バンク)等があらかじめ農業委員会に届け出て取得する場合など、法定の例外があります(農地法第3条第1項第13号等)。

かんたん診断

空き家のこれから、まずは方向性を考えてみませんか?

答えを急がなくても大丈夫です。いくつかの質問から、管理・活用・売却のどこを先に確認すべきか整理できます。

診断をはじめる
家の状況から今後の方向性を整理する線画
  1. 01

    家の状況をチェック

    場所や建物の状態を、わかる範囲で確認します。

  2. 02

    ご希望や事情を選択

    使う・貸す・手放すなど、今のお考えを整理します。

  3. 03

    方向性をご提案

    次に確認したいことを、優先順でお伝えします。