制度・税金2024年(令和6年)4月1日施行公開日: 2026年8月16日

【2024年4月施行】空き家の相続登記義務化と罰則|3年以内の期限・10万円以下の過料・相続人申告登記の使い方

相続した空き家の名義をそのままにしていませんか。2024年(令和6年)4月1日から、相続で不動産を取得した相続人は不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記(名義変更)が法律上の義務となり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法第76条の2・第164条第1項)。この記事では、義務の対象と期限、登記官の催告から地方裁判所の過料決定に至る手続きの流れ、遺産分割が難航する場合の「相続人申告登記」、そして空き家の売却で使える3,000万円特別控除とのタイミング関係を、法務省・国土交通省の公表資料に基づいて解説します。

1. 相続登記義務化の要点と、空き家を抱える相続人が知るべきリスク

これまで相続登記(相続した不動産の名義変更)は任意でした。しかし、所有者が亡くなったまま登記されないことで「登記簿を見ても所有者が分からない土地」=所有者不明土地が全国で増加し、相続登記の未了はその発生原因の約3分の2を占めるとされます(法務省)。このため、所有者不明土地の解消を目的とした民法等改正法(令和3年法律第24号)により、2024年(令和6年)4月1日から相続登記の申請が義務化されました。

📌 制度の要点(不動産登記法第76条の2・第164条第1項/法務省)

  • 義務の主体:相続(遺言を含む)により不動産の所有権を取得した相続人
  • 期限:相続の開始および不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内
  • 過去の相続:2024年3月31日以前に取得を知った相続も対象(経過措置により2027年3月31日までに登記が必要)
  • 罰則:正当な理由のない義務違反は10万円以下の過料
  • 救済措置:遺産分割がまとまらない場合でも、単独で申し出られる「相続人申告登記」で義務を履行できる

出典: 法務省「相続登記の申請義務化について」(令和8年4月1日現在)・「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(令和7年3月27日現在)

空き家を相続した人にとって、この制度は「名義を放置できる期間に上限ができた」という変化です。さらに空き家特有の論点として、①遺産分割が兄弟間で難航して登記に進めないケースが多いこと、②放置によって建物の劣化が進み資産価値が毀損すること、③管理不全の状態が進めば空家等対策特別措置法の勧告対象となり、土地の固定資産税の住宅用地特例(課税標準1/6)が解除され得ること(詳細は「特定空家の固定資産税が最大6倍」の解説記事)、が挙げられます。登記の放置はこうしたリスクの連鎖の出発点になりやすいため、期限を把握して早期に動く意味は従来より大きくなっています。

2. 義務期限診断シミュレーター

相続開始日(被相続人の死亡日)と「不動産を相続で取得したことを知った日」を入力すると、相続登記の義務期限が計算できます。遺産分割がすでに成立している場合は追加義務の期限、空き家の売却を検討している場合は3,000万円特別控除の譲渡期限もあわせて表示されます。

TOOL法務省の制度要件に基づく自動計算

相続登記「義務期限」診断シミュレーター

相続開始日等を入力すると、①相続登記の義務期限、②遺産分割成立後の追加義務の期限、③相続空き家の3,000万円特別控除の譲渡期限をまとめて計算します。

義務の3年は死亡日ではなく「知った日」から起算します(不動産登記法76条の2第1項)。死亡日より前の日にはできません。

出典: 法務省「相続登記の申請義務化について」「相続登記の申請義務化に関するQ&A」/国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置」。制度上の期限を機械的に計算する参考ツールであり、「知った日」の個別判定は法務局・司法書士にご確認ください。
🗓️

①と②を入力すると期限が表示されます

過去の相続(2024年3月以前に取得を知った場合)は、2027年3月31日の経過措置期限が自動適用されます。

3. 過料はどう科されるのか:催告から地方裁判所の決定までの流れ

「10万円以下の過料」と聞くと、期限を過ぎた瞬間に自動的に科されるイメージを持つ方もいますが、実際の手続きは段階的に進みます。法務省のQ&Aが示す流れは次のとおりです。

STEP 1

登記官による催告

義務違反を把握した登記官が、違反者に相当の期間を定めて登記を促す催告書を送付します。

STEP 2

管轄の地方裁判所へ通知

催告の期限までに登記されない場合、登記官が裁判所(不動産の所在地を管轄する地方裁判所)に事件を通知します。催告を受けた相続人の説明で正当な理由があると登記官が認めれば、通知は行われません。

STEP 3

裁判所が過料の裁判

通知を受けた裁判所が要件に該当するか否かを判断し、過料を科す裁判を行います。金額は10万円以下の範囲内で裁判所が決定します。

登記官の催告は、次のいずれかを端緒として義務違反を「職務上知ったとき」に行われるとされています(不動産登記規則第187条第1号)。

  • (1)相続人が遺言の内容に基づく登記申請をした際、その遺言書に別の不動産も相続させる旨が記載されていたとき
  • (2)相続人が遺産分割の結果に基づく登記申請をした際、その遺産分割協議書に別の不動産の記載があったとき

つまり、一部の不動産だけ登記して他を放置していると、提出された遺言書や遺産分割協議書を通じて未登記の不動産が把握され、催告に至る可能性が高まる構造です。一方で、過料は「正当な理由」があれば科されません。法務省は履行期間内に次のような事情があれば、一般に正当な理由があると認められるとしています。

正当な理由として一般的に認められる事情(法務省)

  • ・相続人が極めて多数で、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合
  • ・遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人間で争われ、相続不動産の帰属主体が明らかでない場合
  • ・義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
  • ・DV被害者等で、生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態で避難を余儀なくされている場合
  • ・経済的困窮により登記申請に要する費用を負担する能力がない場合

※これらに該当しなくても、個別の事情に正当性が認められれば正当な理由となり得ます(法務省「相続登記の申請義務化について」)。

なお、手続き面では「相続登記」「相続人申告登記」「放置」の3つが選択肢になります。それぞれの期限・費用・できることを比較したものが以下の表です。

比較3つの選択肢

正式な相続登記・相続人申告登記・放置の比較

期限・費用・できること・リスクを並べて、状況ごとの選択肢を整理します。

通常の相続登記(所有権移転登記)

正式手続
期限知った日から3年以内
主なメリット

名義が相続人に移り、売却・抵当権設定・相続人間の持分確定がすべて可能になる

デメリット・注意点

相続人全員分の戸籍収集と関与(押印・印鑑証明書等)が必要で、遺産分割がまとまらないと進めにくい

おすすめ: 遺産分割がまとまった、または空き家の売却・活用を前提に動いているケース

相続人申告登記(申出)

簡易手続
期限知った日から3年以内
主なメリット

相続人の1人が単独で申出可(代理申出・連名も可)。押印不要・オンライン完結・提出書類も少ない

デメリット・注意点

権利関係を公示するものではなく、売却・担保設定には使えない。遺産分割後の追加義務も履行できない

おすすめ: 遺産分割が長引きそうな場合の、期限までの安全策として

何もしない(期限超過)

非推奨
期限期限超過
主なメリット

―(当座の手間・費用は発生しないが、法律上の義務違反の状態が続く)

デメリット・注意点

登記官の催告→管轄地方裁判所への通知→過料の裁判という流れの対象になり得る。空き家では特定空家等に係る固定資産税の特例解除など別のリスクも重なる

おすすめ: 該当しない(必ず期限内に何らかの手段で履行する)

4. 義務の対象と期限のセルフチェック診断

義務が発生するのは「不動産を相続で取得した」相続人です。遺産分割がまとまっていなくても、法定相続分での共有取得として全ての相続人に義務が発生し、自分が相続する気がない場合も含まれます(法務省Q&A)。逆に、不動産の存在を具体的に知らない間は義務の履行期間は進行しません。6つの質問で自分の状況を確認しましょう。

SELF CHECK

相続登記の義務があるか・いつまでか セルフチェック診断

当てはまる選択肢をタップして、自分の義務の有無と期限、取るべき手続きを確認できます。

診断 1

不動産の登記名義人(所有者)である親族等が亡くなり、あなたはその相続人ですか?

遺言であなたに不動産が相続(遺贈)された場合も義務の対象になります。

診断 2

亡くなった方の名義のままになっている不動産(土地・建物)がありますか?

固定資産税の納税通知書や登記事項証明書で名義を確認できます。

診断 3

その不動産を相続で取得したことを知った日は【2024年(令和6年)4月1日以降】ですか?

2024年3月以前に取得を知った相続は、経過措置で期限が2027年3月31日となります。

診断 4

まだ相続登記(所有権移転登記)や相続人申告登記を行っていませんか?

一部の不動産だけ登記済みの場合、未登記の不動産が残っていれば義務は残ります。

診断 5

相続人同士の遺産分割の話し合いは、まだ成立していませんか?

未成立でも、単独で申し出られる「相続人申告登記」で基本義務を履行できます。

診断 6

将来、その空き家を売却したい(または担保に入れたい)と考えていますか?

売却・抵当権設定には、相続人申告登記ではなく正式な相続登記が必要です。

5. 義務を確実に履行する6ステップ(相続人申告登記の使い方)

遺産分割が難航する空き家の相続では、「まず正式な相続登記」とは限りません。期限までに間に合わない見込みなら、単独で申し出られる相続人申告登記(登録免許税なし・オンライン可)で基本義務だけ先に履行し、分割成立後に正式な登記へ進むのが制度の想定する使い方です。特に注意したいのが、相続人申告登記をした後で遺産分割が成立した場合、成立日から3年以内の追加登記義務が発生する点(不動産登記法第76条の3第4項)です。「もう手続きしたから安心」という誤解による見落としが最も多い落とし穴とされます。

実務フロー現状確認から相談まで

義務を確実に履行する「6ステップ手順」

相続財産の確認から遺産分割、相続人申告登記、遺産分割成立後の追加登記、専門家相談までの手順を整理しました。

01
まず現状把握

登記名義人の死亡と相続財産の確認

固定資産税の納税通知書や権利証・登記事項証明書で、空き家の土地・建物の登記名義人が亡くなった方のままかを確認します。不動産がどこにあるか分からない場合、被相続人が登記簿上の所有者である不動産を一覧で証明する「所有不動産記録証明制度」(2026年〈令和8年〉2月2日施行)を利用できます。

📌 実務上の重要ポイント
  • 被相続人名義の不動産を相続で取得したことを「知った日」が義務の起算点
  • 不動産の存在を具体的に知らない間は、義務の履行期間は進行しない(法務省Q&A)
02
準備

相続人の確定と戸籍関係書類の収集

被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本等を収集し、法定相続人の範囲を確定します。法務局の「法定相続情報証明制度」を利用すると、戸籍一式を一覧図にまとめた証明書を無料で取得でき、以降の登記手続きで戸類の再提出を省けます。

03
話し合い

遺産分割協議を進める(まとまれば正式な相続登記へ)

相続人間で空き家の帰属を決める遺産分割協議を行います。まとまれば、遺産分割協議書・相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書等を添えて、管轄法務局に所有権移転登記(相続登記)を申請します。司法書士に依頼するのが一般的です。

💡 相続登記の登録免許税は不動産価額の0.4%(100万円以下の土地等は免税措置あり・2027年3月31日まで)
04
安全策

期限内に届かない場合は「相続人申告登記」で基本義務を履行

遺産分割が長引きそうな場合でも、3年の期限内なら「相続人申告登記」の申出で基本義務を履行したものとみなされます。単独申出が可能で、押印・電子署名不要、Webブラウザ(かんたん登記・供託申請)での手続も可能、登録免許税もかかりません。

⚠ 注意: 相続人申告登記で果たせるのは基本義務のみ。不動産の権利関係を公示するものではないため、売却や抵当権設定には改めて正式な相続登記が必要です。
実務チェックリスト(クリックで確認完了)
05
見落とし注意

遺産分割が成立したら「成立日から3年以内」の追加登記を

相続人申告登記をした後で遺産分割が成立した場合、その成立日から3年以内に、内容に基づく所有権移転の登記を申請する追加の義務が発生します(不動産登記法第76条の3第4項)。法定相続分どおりの登記をした後で分割し直した場合も同様です(同法第76条の2第2項)。

⚠ 注意: 追加義務は相続人申告登記では履行できません。義務違反は同じく10万円以下の過料の対象です。
06
相談

売却・担保設定の前に正式な相続登記を/法務局・司法書士へ早期相談

空き家を売却する・担保に入れるといった処分には正式な相続登記が前提です。手続きに不安があれば、法務局の登記手続案内(予約制)や司法書士に相談しましょう。日本司法書士会連合会の相続登記相談センター(0120-13-7832・平日10:00〜16:00)でも予約を受け付けています。

📌 実務上の重要ポイント
  • どこまで手続きを進めるべきかは、空き家の活用法(売却・賃貸・保有)によって変わる
  • 相続空き家の3,000万円特別控除の適用期限は2027年12月31日までの譲渡が対象(国土交通省)

📋 相続人申告登記の基本的な提出書類(法務省「相続人申告登記について」より)

  • 申出書(法務局窓口のほか、Webブラウザ上の「かんたん登記・供託申請」で作成・送信可能)
  • 申出人が登記記録上の所有者の相続人であることが分かる戸籍の証明書(戸除籍謄本等。法定相続情報一覧図の写しで代替可)
  • 申出人の住所を証する情報(申出書に氏名のふりがなと生年月日を記載すれば省略可の場合あり)
  • 委任状(代理人が手続を行う場合のみ。複数の相続人が連名で申出る場合は不要)

6. 相続空き家の3,000万円特別控除と相続登記のタイミング

空き家の相続では「いずれ売却して3,000万円特別控除(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例)を使いたい」という計画を持つ方も多いはずです。この特例と相続登記の関係は、次の2点に整理できます。

① 売却には「正式な相続登記」が前提になる

相続人申告登記は不動産の権利関係を公示するものではないため、買主への所有権移転登記や抵当権の設定はできません(法務省Q&A)。売却による換金を目指すなら、遺産分割協議→相続人全員による相続登記→売買という順序が必要です。司法書士には遺産分割の局面から相談しておくと、書類収集と登記申請を並行して進められます。

② 特例の譲渡期限は「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」

義務の期限(知った日から3年)が近づく頃は、特例の譲渡期限も間近になっています。制度の適用期間そのものは2027年(令和9年)12月31日までの譲渡が対象です(国土交通省)。また、適用には市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」を添えた確定申告が必要で、確認書の申請では原則として登記事項証明書を提出します(相続登記が未了の場合は遺産分割協議書等が必要・国土交通省FAQ)。

出典: 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」。要件の詳細な解説は「空き家売却の3,000万円特別控除」の解説記事を参照してください。

逆算して動くのがポイントです。例えば2026年(令和8年)に相続が開始した場合、登記義務の期限は知った日から3年後(2029年)ですが、3,000万円特別控除を使った売却は2029年12月31日までに譲渡を終える必要があります。売却には正式な相続登記が、その前には遺産分割が要るため、「特例を使う前提の空き家」ほど相続登記は早めに着手する価値が高くなります。

7. よくある質問(FAQ)

期限の起算点、過料の仕組み、相続人申告登記と正式な相続登記の使い分け、費用、相談先まで、現場で寄せられる疑問に回答します。

Q&A期限・過料・手続の疑問

相続登記の義務化・過料の「よくある質問(FAQ)」

3年の起算点、過料の額と決定者、相続人申告登記の使い分け、3000万円特別控除との関係まで回答します。

A

相続の開始(被相続人の死亡)および相続によって不動産の所有権を取得したことを「知った日」から3年以内です(不動産登記法第76条の2第1項)。多くの場合は亡くなった日を起点に数えますが、死亡日そのものではなく「知った日」が基準となるため、遠方に住んでいて後から不動産の存在を知った場合などは、知った日から3年となります。なお、不動産を相続で取得したことを具体的に知らない間は、義務の履行期間は進行しません(法務省Q&A)。

📌 要点: 2024年(令和6年)4月1日より前に取得を知った過去の相続は、期限が2027年(令和9年)3月31日までとされる経過措置が適用されます。

本記事の主な出典(公的資料)

  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(令和7年3月27日現在)
  • 法務省「相続人申告登記について」(令和8年3月24日現在)
  • 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」
  • 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」
  • 不動産登記法(e-Gov法令検索)第76条の2・第76条の3・第164条

本記事は一般的な制度情報の提供を目的としており、個別の法律相談・登記手続の代行は行いません。具体的な手続きは法務局または司法書士等の専門家にご確認ください。

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