売る・手放す底地整理の実務ガイド公開日: 2026年8月16日

底地の売却・買取相場と5つの整理方法 — 目的別に最適ルートを診断

底地(借地権が設定された土地の所有権)を整理する方法は、借地人への売却、借地人との共同売却、等価交換、借地権の買取り、専門買取業者への直接売却の5つに大きく分かれます。どれが適しているかは「何を優先するか(早期の現金化・関係性の維持・相続税対策)」と「借地人との関係・資金力」で決まります。本記事は、相場の物差しとなる借地権割合と貸宅地評価、令和2年改正で導入された先買いの規定への対応、借地人との円満な交渉手順、譲渡所得税の概算取得費(5%)までを公的資料(借地借地法・所得税法・地方税法・国税庁)に基づいて整理します。

1. 結論: 底地整理は「目的」と「借地人との関係」で5つのルートに分かれる

底地とは、土地の上に借地権(建物の所有を目的とする土地の賃貸借:借地借地法)が設定された状態で地主が保有する所有権のことです。借地権は存続期間が原則30年(借地借地法第3条)で、期間満了後の更新拒絶には正当事由が必要(同法第6条)など、法制度上、借地人の地位が手厚く保護されています。そのため底地は「自用地(誰にも貸していない更地)と同じ価格では売れない」「地代収入は安定するが管理負担が続く」という性質を持ちます。整理の方法は、優先する目的と借地人との関係で次の5つに整理できます。

① 借地人に底地を買い取ってもらう(関係維持 × 現金化)

借地人にとって底地の購入は完全所有権化(将来の更新や正当事由の不安の解消)を意味するため、理論評価(貸宅地評価)を基準に協議しやすい手法です。借地人の購入資金(金融機関の融資を含む)が前提になります。

② 借地人と共同で更地として一括売却する(価値の最大化)

借地人も建物を手放す方向であれば、土地と建物を一体として一般市場に売り出し、代金を底地と借地権の割合で配分します。単独売却より双方の取り分が大きくなる余地があります。

③ 借地人と等価交換して相互に完全所有権化する(土地を残す)

敷地を分筆し、地主は完全所有権の更地を、借地人は完全所有権の宅地を取得します。現金の授受なしで借地関係を解消でき、固定資産の交換の特例(所得税法第58条)の要件を満たせば譲渡所得の課税を繰り延べられます。

④ 地主が借地権を買い取って完全所有権にしてから売却する(先行資金が必要)

借地権の買取代金(更地評価 × 借地権割合が目安)を先に投入して完全所有権に復帰させ、一般市場に売り出します。最高水準での処分が可能な一方、資金計画が成立要件になります。

⑤ 底地専門の買取業者に直接売却する(最速・即金)

借地人との交渉や通知を地主側で行う必要がなく、地主単独・短期(最短数日〜2週間程度に対応する業者があります)で現金化できるルートです。価格は理論評価より大きく下回る水準(更地価格の1〜2割程度と言われます)が民間相場の目安となるため、複数社の比較が前提になります。

📌 まず知っておくべき2つの法律事実

① 底地の売却に借地人の承諾は不要です。底地は地主の所有権なので地主の意思で売却できますが、第三者に譲り渡す場合は借地権者が自ら買い受ける旨の申し出ができる「先買い」の規定(令和2年改正で導入: 借地借地法第19条の2)に対応する必要があります。② 売却しても借地契約は継続します。借地契約上の権利義務は新しい所有者に引き継がれ、借地人は従来どおり建物に住み続け、地代を新しい地主に支払います(借地人が建物の登記を備えていれば借地権を対抗できます: 同法第10条)。つまり底地売却は、借地人を退去させる手続ではありません。

2. 底地の相場の物差し: 借地権割合と貸宅地評価・路線価のない地域

底地の価格水準を考えるとき、公的な評価の物差しになるのが借地権割合です。国税庁の路線価図では、路線価に付されたアルファベットの記号(A〜F)が借地権割合を示し、A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%と定められています(国税庁「路線価図・評価額の説明」)。相続税の財産評価では、貸宅地(底地)は「自用地としての評価額 ×(1 − 借地権割合)」で評価します(国税庁 財産評価基本通達)。

路線価図の記号借地権割合貸宅地評価の目安(更地3,000万円の例)
A90%3,000万円 × 0.10 = 300万円
C70%3,000万円 × 0.30 = 900万円
D60%3,000万円 × 0.40 = 1,200万円
E50%3,000万円 × 0.50 = 1,500万円
F40%3,000万円 × 0.60 = 1,800万円

※貸宅地評価の計算式は国税庁の財産評価基準(相続税)に基づく理論値であり、実際の売却価格を示すものではありません。

実際の取引価格は、この理論評価を基準にして、買い手ごとの事情で大きく上下します。借地人への売却は理論評価を基準に協議できるのに対し、借地人の購入が見込めない場合は、地代収入を目的とする投資家や専門の買取業者が買い手となり、地代と固定資産税の差引収支(利回り)で評価が行われるため、価格は理論評価を大きく下回る水準になりやすいとされています。ただし、これらの水準は民間相場の一般論(目安)であり、地域や物件の条件で変わるため、公表された一律の相場は存在しません。

地域差: 路線価図がない地域(非線引き区域・市街化調整区域)では評価の物差しが変わる

国税庁の路線価図は主に市街化区域等に整備されており、非線引き区域や市街化調整区域の多くには路線価が付されていません。この場合、相続税の評価は固定資産税評価額に所定の倍率を乗じる倍率方式等によります(国税庁 財産評価基準)。借地権割合という共通の物差しが使えないため、実務では固定資産税評価額を基礎に貸宅地評価の考え方(自用地評価 ×(1 − 借地権割合に準じる割合))で協議・査定が行われることになります。また、買い手の構成も地域で異なります。底地の買い手は地代収入を目的とする投資家・専門業者が中心で、人口減少が続く地方都市では買い手が限られやすいとされる一方、底地の成約実勢を地域別に示す公的統計はありません。都市部と地方の乖離を一律の数字で示すことはできないため、複数社の査定価格を比較することが唯一の確かな基準づくりになります。

3. 手法別の税引後手取りシミュレーター

更地価格・借地権割合・地代・固定資産税を入力すると、5つの整理手法ごとの売却想定額(目安)と、譲渡所得税(長期譲渡 20.315%)を差し引いた手取りを試算できます。取得費が分からない場合には、譲渡収入金額の5%による概算取得費(国税庁タックスアンサーNo.3200)で計算します。

TOOL手法別の税引後手取りを試算

底地の整理方法シミュレーター(税引後手取り)

更地価格と借地権割合、地代・固定資産税を入力すると、手法別の売却想定額(目安)と譲渡所得税を含む手取りを試算できます。取得費が不明な場合は概算取得費(譲渡収入の5%)で計算します(国税庁タックスアンサーNo.3200)。

500万円1億円

※貸宅地評価(底地の理論評価)は「更地価格 ×(1 − 借地権割合)」。現在の設定では1,200万円です(国税庁 財産評価基本通達の考え方による目安)。

② 借地権割合(国税庁路線価図の記号)

※路線価図の記号は A=90%・B=80%・C=70%・D=60%・E=50%・F=40%を示します(国税庁「路線価図・評価額の説明」)。

0円20万円
2万円100万円
⑤ 取得費(購入当時の価格)

概算額: 64.5万円(取得費が分からない場合の計算方法: 国税庁タックスアンサーNo.3200)

⑥ 比較する整理手法
SIMULATION RESULT

借地人に底地を買い取ってもらう(想定所要: 3〜6ヶ月

税引後手取りの概算(譲渡所得税込み)

985.922万円

売却想定額(目安の中央値)1,290万円更地価格の 36%〜50%

売却想定額(目安)1,290万円
仲介手数料等の譲渡費用▲ 69.17万円
取得費(概算5%64.5万円
譲渡所得(課税対象額)1,156.33万円
譲渡所得税(長期 20.315%)234.908万円
税引後手取り概算985.922万円

保有を続けた場合の年間収支(参考)

年間地代 30万円 − 固定資産税等 10万円 黒字 20万円(実質利回り 1.67%・底地評価ベース)

※手法別の売却想定額は、貸宅地評価の理論(自用地評価 ×(1 − 借地権割合))と民間相場の一般的な水準から算出した目安であり、実際の取引価格を保証するものではありません。譲渡所得税率は所有期間5年超の長期譲渡(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の計20.315%: 国税庁タックスアンサーNo.3208)による概算で、5年以下の短期譲渡(39.63%)や各種特例(取得費加算等)は含めていません。具体的な税額・申告は税務署または税理士にご確認ください。

4. 5つの整理方法を比較表で整理する

買い手(相手方)・価格水準の目安・必要な協議・所要の目安の4点で、5つの整理方法を比較します。

比較相手方・価格水準・所要で比較

底地整理「5つの方法」比較表

買い手(相手方)・価格水準の目安・必要な協議・所要の目安の4点で、5つの整理方法を整理します。

① 借地人への売却

王道
所要の目安3〜6ヶ月
主なメリット

借地人にとって完全所有権化により将来の更新・正当事由の不安が解消されるため、理論評価に近い価格が成立しやすい。成立すれば借地契約が終了し、地主の管理負担も終わる。

デメリット・注意点

借地人に購入資金がない・高齢で承継が難しい場合は成立しない。直接交渉で関係がこじれるリスクがあるため第三者仲介が前提になる。

おすすめ: 借地人と良好な関係で、購入資金(金融機関の融資を含む)の見込みがある場合

② 借地人との共同売却

価値の最大化
所要の目安6ヶ月〜1年
主なメリット

更地として一般市場に売り出すため土地全体の価値を最大化しやすく、単独売却より双方の取り分が大きくなる余地がある。

デメリット・注意点

借地人が建物を手放す(引っ越す)意思がないとそもそも成立しない。代金配分と費用負担の合意形成が難しく長期化しやすい。

おすすめ: 借地人も建物・土地を手放す方向で、地主と借地人の関係が良好な場合

③ 等価交換

土地が残る
所要の目安6ヶ月〜1年半
主なメリット

現金の持ち出しなしで借地関係を解消し、地主は完全所有権の更地を取得できる。交換の特例(所得税法第58条)の要件を満たせば譲渡所得の課税を繰り延べられる。

デメリット・注意点

敷地が狭い・角地でない場合は分筆が物理的に難しい。測量・分筆登記の費用と期間が必要。

おすすめ: 敷地が広く、土地の一部を手元に残して活用したい場合

④ 借地権の買取り

先行資金
所要の目安4〜8ヶ月
主なメリット

完全所有権に復帰させてから一般市場へ売り出せるため、最高水準での処分が可能。地主自身での活用(自宅建築・賃貸経営)という選択肢も残る。

デメリット・注意点

借地権の買取代金(更地評価の数割相当)を先に投入する資金計画が必要。投入後の市況変動のリスクを地主が負う。

おすすめ: 手元資金に余裕があり、価値の最大化を優先できる場合

⑤ 専門買取業者への直接売却

最速・即金
所要の目安最短数日〜2週間
主なメリット

借地人への交渉・通知を業者側で処理でき、地主単独・短期での現金化が可能。直接買取のため仲介手数料が発生しない。地代滞納や関係悪化の案件にも対応する業者がある。

デメリット・注意点

価格水準は理論評価(貸宅地評価)より大きく下回る。提示価格の妥当性は複数社の比較で確認する必要がある。

おすすめ: 早期の現金化・管理負担の解消を最優先する場合や、借地人との協議が難しい場合

5. 手法詳説: それぞれの進め方と法的な論点

① 借地人への売却 — 「先買い」との関係も含めた進め方

借地人に底地を買い取ってもらう場合、価格は貸宅地評価(自用地評価 ×(1 − 借地権割合))を基準に協議します。借地人にとって完全所有権化は、期間満了時の更新の不安(正当事由: 借地借地法第6条)や建物の建て替え時の制約からの解放を意味するため、理論評価に近い価格が成立しやすいとされます。資金面では金融機関の融資(底地の購入ローン)が利用できるかが焦点になり、借地人の年齢や収入によっては承継(子への購入)を含めた話し合いも実務上みられます。打診は不動産会社等の第三者経由・書面で行い、借地人に「住む権利に変更がないこと」を先に伝えることが協議成立の前提です(詳細はセクション6)。

② 共同売却 — 更地価格の配分を合意する

借地人と地主が土地と建物を一体として第三者に売却し、代金を配分します。更地として売り出す場合は建物の解体(解体更地渡し)と費用負担、建物付きで売る場合は建物の処理を借地人と協議します。代金の配分割合は、底地評価(自用地評価 ×(1 − 借地権割合))と借地権評価の理論を基準に合意形成します。土地全体の価値を最大化できる反面、配分と費用負担の合意に時間がかかるのが一般的で、仲介手数料や測量費用の分担も含めて書面で明確にします。

③ 等価交換 — 分筆して相互に完全所有権化する

敷地を分筆し、地主は完全所有権の更地を、借地人は建物敷地を完全所有権として取得します。現金の授受が原則不要で、交換差金(評価額の差の調整)を設けることもあります。税務上は一定の要件(交換する資産がいずれも土地または土地と建物であること、1年以上の保有、譲渡と取得が同時であること等)を満たせば固定資産の交換の特例(所得税法第58条)により譲渡益への課税を繰り延べられます。物理的条件(敷地面積・接道。分筆後もそれぞれが建築基準法上の道路に2メートル以上接する必要がある等)と測量・分筆登記の費用・期間が成立要件になります。

④ 借地権の買取り — 完全所有権化してから売却する

地主が借地人から借地権を買い取り(価格は更地評価 × 借地権割合が目安)、完全所有権の自用地にしたうえで一般市場に売却する方法です。売却せず自ら活用(自宅の建築・賃貸経営)する選択肢も生まれます。数千万円単位の買取代金を先に投入する資金計画と、投入後の市況リスクを地主が負う点が最大の留意点です。借地人側の同意(建物の引渡しを含む)が前提のため、借地人が立ち退きを望まない場合は成立しません。

⑤ 専門買取業者への直接売却 — 地主単独で最短の現金化

底地専門の買取業者は、地代収入の管理・滞納の回収を事業として引き受ける前提で底地を自己買取します。借地人への通知・交渉を業者側で処理でき、仲介手数料も発生しないため(自己買取のため)、地主単独で最短数日〜2週間程度での現金化に対応する業者があります。価格水準は理論評価より大きく下回る(更地価格の1〜2割程度と言われる)のが民間相場の目安であるため、必ず複数社(3〜5社)の査定を取り、提示価格の根拠(借地権割合・地代利回り)を確認して比較します。地代滞納中や借地人と連絡が取れない案件を扱う業者もあります。

6. 借地人との円満交渉: ステップとコミュニケーションの具体例

底地整理の成否は、借地人との協議の入り方でほぼ決まります。借地人にとって「土地の話」は、住まいの継続に関わる重大な関心事です。次の5ステップは、感情的な対立を避けながら協議を進めるための実務上の標準的な手順です。

STEP 1: 事実関係の棚卸し(借地人と話す前の準備)

借地契約書(期間・地代・特約)、建物の登記、地代の受領状況(滞納の有無)、固定資産税の額、路線価図の借地権割合を先に整理します。交渉で相手が不安になるのは「情報を握られたまま話を進められること」であるため、こちらが事実を整理できていることは誠実さの証明にもなります。

STEP 2: 第三者経由で書面による打診(直接の押しかけはNG)

地主が直接借地人の自宅を訪ねて買取りを持ちかけるのは、防衛本能を刺激し感情的対立の典型的な発端となるため避けます。不動産会社等の第三者を通じて書面で打診するのが実務上の定石です。第一声の文面では、「居住の継続と契約条件に変更がないこと」を先に明示します

文例(打診レターの趣旨)

「土地の今後の管理についてご相談があり、書面にてご連絡いたしました。もし○○様のご意向があれば、土地をご購入いただくことも可能です。なお、ご購入がない場合も、現在のお住まいと借地契約の内容が変わることは一切ありませんので、ご安心くださいませ。ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。」

STEP 3: 価格の根拠を開示して協議する(路線価通りの一方的な金額はNG)

貸宅地評価(自用地評価 ×(1 − 借地権割合))の計算根拠を示したうえで価格を提示します。借地権割合が高い(A〜C)地域では底地の理論評価が低くなるため、借地人にとって「買いやすい」水準になります。借地人側に資金の懸念がある場合は、金融機関の融資の紹介や検討期間(1〜2ヶ月程度)の設定が協議成立の現実的な調整点です。

STEP 4: 借地人が買わない場合 — 先買いの規定を踏まえて第三者へ

借地人に購入の意思がない場合、底地は第三者(投資家・専門買取業者)に売却できますが、令和2年(2020年)の借地借地法改正により、土地の所有者が第三者に土地を譲り渡そうとする場合には、借地権者が自らこれを買い受ける旨の申し出をすることができる「先買い」の規定が導入されました(借地借地法第19条の2)。借地人から申し出がある場合の手続(売買条件の通知・回答期間等)は法令・実務書または不動産会社・専門家に確認して進めます。第三者に売却した後も借地契約は継続し、買主が新しい賃貸人として地代を受け取ります。

STEP 5: 合意の書面化と事後手続

価格・登記費用の負担・引渡条件を売買契約書に明記します。所有権移転登記の登録免許税は土地の売買による移転登記で不動産価格の2/100です(登録免許税法)。借地人への売却(①)や借地権買取り(④)では借地契約の終了に伴う賃借権の抹消・建物の登記との整合を、専門買取(⑤)では買主による賃貸人変更の通知を、それぞれ確認します。

⚠ コミュニケーション上のNG(関係をこじれる典型パターン)

  • 地主が直接自宅へ押しかけて買取りを迫る(防衛本能を刺激する典型的なパターン)
  • 更新拒絶や立退きを示唆して圧力をかける(正当事由がなければ更新拒絶は認められず、関係悪化のみが残る: 借地借地法第6条)
  • 根拠を示さず一方的に金額を提示する、または感情で値段を動かす(根拠の開示が協議の土台)
  • 借地人の資金事情を確認せずに回答期限を切る(融資の検討期間の設定が現実的)

7. 保有中の固定資産税: 底地にも適用される住宅用地特例と空き家特例の除外

固定資産税・都市計画税は土地の所有者(地主)に課されるため、底地にも負担が続きます。このとき重要なのが住宅用地の課税標準の特例(地方税法第349条の3)です。借地上の建物が専ら人の居住の用に供されている場合、その土地は住宅用地として、課税標準額が価格の1/6(小規模住宅用地: 200㎡以下)または1/3(一般住宅用地: 200㎡超)に減額され、都市計画税にも1/3・2/3の特例があります(総務省「固定資産税のあらまし」)。この特例は土地所有者に対する課税について適用されるため、建物が借地人の所有であっても、住宅として使われている間は地主の底地にも特例が適用されます

特例が外れると課税標準は最大6倍相当に — 建物の滅失・空き家特例の除外

建物が滅失・解体されたり、住宅としての使用がなくなったりして住宅用地の要件を満たさなくなると特例が外れ、課税標準は固定資産税で最大6倍(都市計画税で最大3倍)に相当する水準まで上がります。さらに、借地人の建物が「特定空き家等」に該当して助言・指導・勧告・命令といった措置がとられた場合、その敷地(地主の底地)について住宅用地特例の適用を受けないものとする措置が講じられうることが法律上定められています(空き家対策特別措置法第14条の3)。底地の地主は、借地人側の建物の状況が自身の税負担に影響する点に留意が必要です。

地代収入と固定資産税等の収支(実質利回り)が底地の投資家としての価値を左右するため、保有を続けるか整理するかの判断材料として、シミュレーター(セクション3)の「保有を続けた場合の年間収支」も参考にしてください。

8. 譲渡所得税: 取得費が分からない場合の計算と相続底地の特例

底地の売却も土地の譲渡であるため、譲渡所得として確定申告の対象になります。税率は、売却年の1月1日時点で所有期間が5年超なら長期譲渡所得(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の計20.315%)、5年以下なら短期譲渡所得(所得税30%・住民税9%の計39.63%)です(国税庁タックスアンサーNo.3208・No.3211)。譲渡所得は「譲渡収入 − 取得費 − 譲渡費用」で計算します。

取得費が分からない場合

概算取得費(譲渡収入の5%)

購入当時の売買契約書等がなく取得費が分からない場合は、譲渡収入金額の5%を概算取得費として計算できます(国税庁タックスアンサーNo.3200)。例: 1,200万円で売却 → 取得費60万円。

実額を証明できる場合

契約書・領収書等による実額控除

被相続人の売買契約書・領収書等で実額を証明できれば、5%より大きい取得費を控除でき税額を抑えられる可能性があります。所有期間が長い土地ほど実額証明の効果は大きくなります。

相続で取得した底地の2つの特例

  • 取得費・取得時期の引継ぎ(所得税法第60条): 相続で取得した土地は、原則として被相続人の取得費・取得時期を引き継ぎます。昭和の購入など長期保有の土地では、実額の取得費を証明することが税額に大きく影響します。
  • 相続税の取得費加算の特例(所得税法第58条): 相続税を納付している場合、相続開始の日の属する年の翌年1月1日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば、その土地に対応する相続税額を取得費に加算できます。

※土地を丸ごと取得した後に底地のみを売却する場合の取得費の配分(按分)は、借地権割合等を参考に実務上 行われることがあります。個別の取扱いは税務署・税理士にご確認ください。

💰 売却費用の内訳と上限ルール

譲渡費用として控除できる主な費用は、仲介手数料(上限は宅建業法に基づく昭和45年建設省告示第1552号。価格800万円以下の「低廉な空家等」は上限30万円=税込33万円の特例: 令和6年国土交通省告示第949号)、測量費、登録免許税(土地売買の所有権移転登記は不動産価格の2/100)、司法書士報酬等です。専門買取業者への直接売却では仲介手数料が発生しない(自己買取のため)代わりに、売却価格自体が理論評価より下回る水準になる関係を、手取り全体で比較します。

9. 6つのチェックで目的別の最適ルートを診断する

借地人との関係、借地人の資金の見込み、優先する目的(早期現金化・相続税対策)、地代収支、相談の状況の6点で、検討しやすい整理方法の傾向を確認できます。

ROUTE DIAGNOSIS

6つのチェックで目的別ルート診断

当てはまる選択肢をタップして、優先する目的と借地人との関係から、検討しやすい整理方法の傾向を確認できます。手法の成立可否は借地人の資力や土地の条件によるため、最終判断は協議・査定の後に行ってください。

チェック 1

借地人と日常的に連絡が取れる、良好〜普通の関係ですか?

借地人への売却・共同売却・等価交換は、協議が成立する関係性が前提になります。第三者経由の書面での打診から始める方法もあります。

チェック 2

借地人に底地を買い取る資金(金融機関の融資を含む)の見込みがありそうですか?

借地人への売却は、借地人にとって完全所有権化(将来の更新や正当事由の不安の解消)を意味します。資金計画の見込みが協議の成立要件です。

チェック 3

最優先の目的は「早期の現金化・管理負担の解消」ですか?

早期現金化を優先する場合、借地人との交渉が不要な専門買取業者への直接売却が現実的な候補になります(価格水準は理論評価より下回る点に注意)。

チェック 4

地代収入が固定資産税等の負担を下回る、または地代の滞納がありますか?

実質利回りが低い底地は投資家向けの売却が難しく、整理(売却)を前倒しで検討する材料になります。固定資産税は土地所有者(地主)に課されます。

チェック 5

底地を整理する目的は「相続税対策・生前整理」ですか?

相続税の評価(貸宅地)や小規模宅地等の特例(相続税法第69条の3)、相続税の取得費加算(所得税法第58条)の適用可否は、整理の順序と時期を左右します。

チェック 6

まだ査定や専門家への相談を受けていませんか?

底地は取引が少なく一律の公表相場がないため、複数社の査定価格を比較することが判断の土台になります。相談が後出しになると選択肢が狭まります。

すべての項目に回答すると傾向が表示されます

どのルートに傾く場合でも、まずは契約・登記・収支の棚卸しと複数社の査定が土台になります。

10. 底地整理から売却完了までの「6ステップ手順」

契約・登記・収支の棚卸しから、借地人への打診・複数社の査定を経て、契約・登記・確定申告までの実務フローです。

実務フロー棚卸しから確定申告まで

底地整理から売却完了までの「6ステップ手順」

契約・収支の棚卸しから、借地人への打診、複数社の査定、契約・登記、確定申告までの流れです。

01
準備

現状の棚卸し: 契約・登記・収支を整理する

借地契約書(存続期間・地代・特約の有無)、土地・建物の登記事項証明書、地代の受領状況、固定資産税の納税通知書をそろえます。国税庁の路線価図で物件の借地権割合(記号A〜F)を確認し、貸宅地評価の目安(自用地評価 ×(1 − 借地権割合))を把握します。定期借地権(借地借地法第22条・第23条)かどうかで使える整理手法が変わるため、契約形態の確認が最初の分岐点です。

📌 実務上の重要ポイント
  • 路線価図の記号で借地権割合を確認する(国税庁「路線価図・評価額の説明」)
  • 地代の滞納の有無・金額は査定条件に影響するため受領記録を整理する
  • 相続で取得した底地は、被相続人の売買契約書等の取得費資料を探しておく(実額証明・取得費加算に使用)
実務チェックリスト(クリックで確認完了)
02
方針の決定

目的の優先順位を決める(早期現金化・関係維持・相続税対策)

底地整理の手法は「何を優先するか」で最適解が変わります。早期の現金化と管理負担の解消を優先するなら専門買取業者への直接売却が現実的、借地人との関係維持と価値の最大化を優先するなら借地人への売却・共同売却・等価交換の協議が候補になります。

📌 実務上の重要ポイント
  • 早期現金化優先: 専門買取業者への直接売却(借地人との交渉不要・短期)
  • 関係性・価値の最大化優先: 借地人への売却、共同売却、等価交換の協議
  • 相続税対策が目的なら、貸付事業用宅地等の評価(相続税法第69条の3の小規模宅地等の特例)や相続税の取得費加算(所得税法第58条)の適用可否を税理士に確認する
💡 相続税の申告・納税が近い場合は、売却時期と特例適用期限(相続開始の翌年1月1日から3年目の年末)の整合を先に確認します。
03
協議の入口

借地人への打診は第三者経由・書面で行う

借地人への打診は、地主が直接自宅を訪ねて行うのではなく、不動産会社等の第三者を通じて書面で行うのが実務上の定石とされます。第一声では「土地の所有を移しても、借地人が建物に住み続ける権利と契約条件に変更がないこと」を先に伝え、退去を求められているという不安を与えない配慮が、その後の協議成立を左右します。

📌 実務上の重要ポイント
  • 文例: 「土地の今後についてご相談があります。ご意向があれば購入のご検討をお願いしたく、書面にてご連絡いたしました。なお、お買い上げがない場合も、現在のお住まいと契約内容が変わることはございません。」
  • 価格は理論(貸宅地評価)の根拠を示し、いきなり金額を突きつけない
  • 借地人が高齢・資金難の場合は、金融機関の融資の猶予や分割の相談期間を設ける
⚠ 注意: 更新拒絶や立退きを示唆する言い方は逆効果です。正当事由(借地借地法第6条)がない更新拒絶は認められず、関係の悪化だけが残ります。
04
価格の把握

底地の査定を複数社から取って比較する

底地の取り扱い実績がある買取業者・仲介会社3〜5社に査定を依頼します。提示価格の根拠(借地権割合・地代利回り・固定資産税の収支)を確認し、水準に大きな差がある場合は理由を聞いて比較します。底地は取引が少なく一律の公表相場がないため、複数社の提示を集めることが唯一の確かな基準づくりです。

📌 実務上の重要ポイント
  • 査定依頼時に伝える情報: 借地契約の内容・地代と滞納の有無・固定資産税額・借地権割合
  • 路線価のない地域(非線引き区域等)では固定資産税評価額ベースの説明になることを確認する
  • 仲介手数料の上限は宅建業法の告示(建設省告示第1552号。低廉な空家等の特例は国交省告示第949号)で確認できる
実務チェックリスト(クリックで確認完了)
05
交渉・条件整理

手法を確定し、条件交渉を行う

借地人へ売る場合は貸宅地評価(自用地評価 ×(1 − 借地権割合))を基準に価格と資金計画を協議します。共同売却なら代金の配分(底地評価と借地権評価の割合)と費用負担、等価交換なら分筆の区割りと測量・登記費用の分担を合意します。借地人と合意できず第三者へ売る場合は、先買いの規定(借地借地法第19条の2)に沿った手続を前提に進めます。

📌 実務上の重要ポイント
  • 価格・登記費用・測量費用の負担区分は書面で明確にする
  • 共同売却・等価交換は配分や区割りの合意形成に時間がかかる前提でスケジュールを組む
  • 専門買取業者へ売る場合は、提示価格・引渡条件・契約不適合責任の扱いを複数社比較のうえ決める
06
実行・事後手続

売買契約・決済登記・賃貸人変更の通知と確定申告

売買契約を締結し、所有権移転登記(登録免許税は土地の売買による所有権移転登記で不動産価格の2/100)を行います。借地人には新しい賃貸人(地主)への変更と地代の送り先を通知します。売却した年の譲渡所得税は、翌年2月16日〜3月15日に確定申告します(取得費が不明な場合は譲渡収入の5%による概算取得費: 国税庁タックスアンサーNo.3200)。

📌 実務上の重要ポイント
  • 登記は司法書士に依頼するのが一般的。登録免許税(土地売買の移転登記は2/100)と司法書士報酬を見積もる
  • 譲渡所得は所有期間で税率が変わる(5年超は長期20.315%・5年以下は短期39.63%: タックスアンサーNo.3208/No.3211)
  • 相続で取得した底地は、実額の取得費証明や相続税の取得費加算(所得税法第58条)で税額が変わるため、申告前に整理する
実務チェックリスト(クリックで確認完了)

📋 相談前にそろえておく書類・情報リスト

  • 借地契約書(ない場合は、経緯が分かる書面・登記情報を準備)
  • 土地および建物の登記事項証明書(全部事項証明書)
  • 固定資産税・都市計画税の納税通知書(課税明細)
  • 地代の受領記録(通帳・領収書。滞納がある場合はその内訳)
  • 国税庁の路線価図(物件の借地権割合の記号を確認)
  • 相続で取得した場合は、相続税の申告書・評価明細と被相続人の売買契約書等の取得費資料
  • 固定資産税評価証明書(路線価のない地域の評価確認用)

11. よくある質問(FAQ)

借地人の承諾の要否、相場の物差し、取得費が不明な場合の税計算、路線価のない地域、固定資産税、等価交換の税金という実務的な疑問への回答です。

Q&A実務の疑問と落とし穴

底地の売却・整理「よくある質問(FAQ)」

借地人の承諾の要否、相場の物差し、取得費が不明な場合の税計算、地域差、固定資産税まで実務の疑問に回答します。

A

不要です。底地は地主の所有権(土地所有権)なので、地主の意思で自由に売却でき、借地人の同意や承諾を法律上得る必要はありません。ただし、令和2年(2020年)の借地借地法改正により、底地を第三者に譲り渡そうとする場合には借地権者が自らこれを買い受ける旨の申し出をすることができる「先買い」の規定が導入されました(借地借地法第19条の2)。また、売却後も借地契約は継続し、新しい所有者が地代を受け取る賃貸人となります。借地人が建物の登記を備えていれば、借地権を新しい所有者に対抗できます(同法第10条)。

📌 要点: 底地の売却に借地人の承諾は不要。ただし第三者へ売る場合は先買い(借地借地法第19条の2)に対応します。

出典・参考資料(公的資料)

  • e-Gov法令検索「借地借地法」(平成3年法律第90号)第3条(存続期間30年)・第6条(正当事由による更新拒絶等)・第10条(借地権の対抗力)・第13条(建物買取請求権)・第19条(借地権の譲渡・転貸の承諾)・第19条の2(土地の賃借人の先買い: 令和2年改正で導入)・第22条・第23条(定期借地権)
    https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=303AC0000000090
  • e-Gov法令検索「所得税法」(昭和40年法律第33号)第58条(交換・相続税の取得費加算の特例)・第60条(相続により取得した資産の取得費等の引継ぎ)
    https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=033AC0000000033
  • e-Gov法令検索「地方税法」(昭和25年法律第226号)第349条の3(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例: 小規模住宅用地1/6・一般住宅用地1/3)
  • e-Gov法令検索「空き家対策特別措置法」(平成26年法律第127号)第14条の3(特定空き家等の敷地に対する住宅用地特例の適用除外措置)
  • e-Gov法令検索「相続税法」(昭和25年法律第73号)第69条の3(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例: 貸付事業用宅地等は200㎡まで50%減額)
  • e-Gov法令検索「登録免許税法」(昭和42年法律第35号) — 土地の売買による所有権移転登記の登録免許税は不動産価格の1000分の20(2/100)
  • 国税庁「路線価図・評価額の説明」 — 路線価に付された記号の借地権割合(A=90%〜F=40%)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/evaluation/
  • 国税庁「財産評価基本通達」(貸宅地等の評価) — 貸宅地の評価額 = 自用地としての評価額 ×(1 − 借地権割合)
  • 国税庁「タックスアンサーNo.3200 譲渡所得と必要経費」(取得費が分からない場合の概算取得費: 譲渡収入金額の5%)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3200.htm
  • 国税庁「タックスアンサーNo.3208 長期譲渡所得の税額の計算」(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の計20.315%)・「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」(所得税30%・住民税9%の計39.63%)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
  • 総務省「固定資産税のあらまし」 — 住宅用地の課税標準の特例(固定資産税1/6・1/3、都市計画税1/3・2/3)
  • 国土交通省「不動産流通について」 — 宅建業法に基づく報酬上限(昭和45年10月23日建設省告示第1552号)・「低廉な空家等」の取扱い(令和6年6月21日国土交通省告示第949号、価格800万円以下は上限30万円=税込33万円)

※本記事の内容は公開時点の法令・公的資料に基づく一般的な情報の整理であり、個別の取引・税務・登記に関する助言ではありません。手法別の価格水準(更地価格の1〜2割等)は民間相場の一般論としての目安です。底地の整理・売却の具体的な判断は、不動産会社・司法書士・税理士等の専門家にご相談ください。

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