東京の公示地価は2024年に前年+4.59%上昇
結論から言うと、**東京都3,516地点の公示地価(2024年1月1日基準)の前年変動率中央値は+4.59%**で、96.6%の地点が値上がりしています。値下がりした地点はわずか0.9%で、東京ではほぼ全地点の地価が前年を上回りました。変動率の平均は+4.98%、下位10%点(P10)でも+1.72%、上位10%点(P90)は+8.43%で、下位から上位まで幅広く上昇が及んでいます。
ここで言う「公示地価」とは、国土交通省が毎年1月1日時点で公示する標準地の地価(円/㎡)です。本記事の数値はすべて、東京都の標準地データに内包される過年度価格履歴(1995〜2024年)を使い、当年価格を前年価格で割って1を引いた前年変動率を、用途別・区別・価格帯別に再集計したものです。集計は中央値が主軸で、断りのない限り「両年の価格が0より大きい地点」のみを対象とします。
公示地価とは — 公的な地価指標の基礎知識
公示地価は、国土交通省が「地価公示」に基づいて毎年公表する公的な地価指標です。全国の代表的な標準地(2024年基準で約4万1千地点)について、1月1日時点の正常な価格(円/㎡)を公示します。土地の取引指標や相続税・固定資産税の評価基準として参照され、「この土地の適正な相場はいくらか」を知るための政府の出発点になります。
本記事で扱うのはこのうち東京都分(3,516地点)です。各標準地には当年の価格(current_price)に加え、過去年度の価格履歴が格納されています。この履歴があるからこそ、単年のスナップショットではなく「年々どれくらい変わったか」という年率変動を計算できます。なお、公示地価は標準地ベースの指標であり、全取引の単純な集計値ではない点にご注意ください。
用途別で上がり方が違う — 商業地が住宅地を突き放す
用途別に前年変動率中央値を見ると、上がり方に明確な差があります。
| 用途 | 前年変動率(中央値) | 地点数 |
|---|---|---|
| 商業地 | +7.21% | 944 |
| 工業地 | +5.52% | 269 |
| 住宅地 | +3.98% | 2,192 |
| その他 | 0.0% | 76 |
商業地の+7.21%が住宅地+3.98%の約1.8倍です。商業地はオフィス・店舗用の中心市街地に集中し、インバウンド需要や再開発の恩恵を受けやすい特性があります。工業地+5.52%は物流拠点需要の高さを映していると考えられます。一方「その他」(田・畑など)は0.0%でほぼ横ばいでした。
ここから言える「So what」は、同じ東京でも用途によって地価の上がり方が全く違うということです。商業地の上昇が目立つのは都心の一部に偏りやすく、住宅地の+3.98%はより広いエリアの平均的な動きと捉えることができます。
コロナ底から回復が加速 — 住宅地10年の時系列
住宅地の前年変動率中央値を時系列で追うと、コロナ禍の影響とその後の回復がくっきり見えます。
| 年 | 前年変動率(中央値) | 地点数 |
|---|---|---|
| 2019年 | +2.42% | 2,055 |
| 2020年 | +1.33% | 2,100 |
| 2021年 | −0.35%(底) | 2,127 |
| 2022年 | +1.01% | 2,146 |
| 2023年 | +2.70% | 2,172 |
| 2024年 | +3.98% | 2,192 |
2019年まで+2%台で推移していた地価は、2020年に+1.33%へ減速し、2021年には−0.35%でマイナスに転じました。これがコロナ禍による地価の底です。その後2022年に+1.01%で回復が始まり、2023年+2.70%、2024年+3.98%と、年を追うごとに上昇ペースが強まっています。2024年の+3.98%は2019年+2.42%を大きく上回り、コロナ前の水準を超えて加速している点がポイントです。
商業地は10年で+54% — CAGRで読む長期トレンド
商業地は住宅地よりも変動の振幅が大きいです。2020年+6.36%から2021年には−1.50%へ急落しましたが、2022年+0.90%、2023年+3.62%、2024年+7.21%と、インバウンド回復を映して急角度で持ち直しています。
長期の上がり方を見るために、2014年から2024年までの10年間の年率複利成長率(CAGR)と累積上昇率を計算しました。
| 用途 | 10年CAGR(年率) | 10年累積上昇率 | 地点数 |
|---|---|---|---|
| 商業地 | +4.43%/年 | +54.3% | 748 |
| 工業地 | +2.78%/年 | +31.6% | 187 |
| 住宅地 | +1.70%/年 | +18.4% | 1,662 |
商業地は10年で毎年+4.43%のペースで値上がりし、累積で+54.3%(価格が1.5倍超)。住宅地はCAGR+1.70%、累積+18.4%でした。商業地は10年で住宅地の約3倍のペースで上昇した計算になります。CAGRは年ごとの変動を平準化した長期の「年平均ペース」で、単年の前年比とは別の見方を提供します。
区別ランキング — 中央区+11.83%から町田+1.39%まで
区市別の前年変動率中央値(地点数20以上)を見ると、都心と郊外で約8倍の開きがあります。
| 区市 | 前年変動率(中央値) | 地点数 |
|---|---|---|
| 中央区 | +11.83% | 27 |
| 千代田区 | +10.70% | 28 |
| 台東区 | +10.53% | 24 |
| 新宿区 | +9.82% | 29 |
| 港区 | +9.59% | 27 |
| 町田市 | +1.39% | 43 |
| 八王子市 | +3.05% | 73 |
都心3区(中央・千代田・台東)は二桁に近い+10%台を記録し、新宿・港も+9%台。一方、多摩地域の町田市+1.39%・八王子市+3.05%は上昇が緩やかです。都心の再開発やオフィス・商業需要の回復が地価を押し上げ、郊外では上昇が限定的という構図が数字で裏付けられました。同じ東京でも住む場所によって地価の上がり方が大きく異なることがわかります。
高い地ほど上がる — 価格帯別の変動率格差
住宅地を価格(円/㎡)で五分位(5等分)に分け、価格帯ごとの前年変動率を見ると、「高い地ほど上がりやすい」という傾向が浮かびます。
| 価格帯(万円/㎡) | 前年変動率(中央値) | 地点数 |
|---|---|---|
| Q5(64.8万円/㎡超) | +6.61% | 439 |
| Q4(41.9〜64.7) | +4.98% | 438 |
| Q3(28.5〜41.9) | +3.93% | 441 |
| Q2(16.9〜28.5) | +2.99% | 433 |
| Q1(16.9万円/㎡未満) | +1.72% | 441 |
最高価格帯(Q5)の+6.61%は最低価格帯(Q1)+1.72%の約3.8倍です。高価格地は都心の人気エリアに偏り、需要集中で値上がりしやすい半面、低価格地は郊外や条件の限られる立地に多く、上昇テンポが緩やかです。つまり地価の上昇が一様ではなく、高価格圏への集中が進んでいる(二極化)ことを示しています。
東京は全国の3.7倍の上昇率 — 地域比較
住宅地の前年変動率で東京と全国(東京除く)を比べると、東京の突出ぶりが際立ちます。
| 地域 | 前年変動率(中央値) | 値上がり地点割合 | 地点数 |
|---|---|---|---|
| 東京 | +3.98% | 97.9% | 2,192 |
| 全国(東京除く) | +1.07% | 64.7% | 22,673 |
東京+3.98%は全国(東京除く)+1.07%の約3.7倍です。値上がり地点の割合も東京97.9%に対し全国64.7%で、東京ではほぼ全地点が上がる一方、地方では3分の1超が下落か横ばいです。地価上昇が東京に強く偏っている構造が数字で見て取れます。
東京の地価水準 — 万円/㎡で見る絶対額
最後に、変動率ではなく絶対額で東京の公示地価水準を確認します(2024年1月1日基準)。
| 用途 | m²単価中央値 | 地点数 |
|---|---|---|
| 商業地 | 130.0万円/㎡ | 950 |
| 工業地 | 43.1万円/㎡ | 270 |
| 住宅地 | 34.5万円/㎡ | 2,219 |
商業地130.0万円/㎡は住宅地34.5万円/㎡の約3.8倍の水準です。坪換算(1㎡≈0.3025坪)すると、住宅地は約115万円/坪、商業地は約430万円/坪に相当します。東京には全国最多の3,516地点が配置され、用途別の単価差がそのまま変動率の差につながっている側面があります。
まとめ — 自分のエリアの地価変動を調べるステップ
本記事の数字を整理します。東京の公示地価は2024年に前年+4.59%上昇(全用途中央値)し、96.6%の地点が値上がりしました。用途別では商業地+7.21%が住宅地+3.98%を大きく上回り、都心3区は+10%台、郊外の町田市は+1.39%と地域差も顕著です。2021年のコロナ底(住宅地−0.35%)から回復が加速し、10年CAGRは商業地+4.43%/年・住宅地+1.70%/年。高価格地ほど上がりやすく、東京の住宅地上昇率は全国の約3.7倍です。
ご自身のエリアの地価変動を調べる手順は次のとおりです。(1) 土地の所在地を確認し、(2) 国土交通省の地価公示・公示地価検索システムで近傍の標準地を探し、(3) 過年度の価格履歴を並べて前年比を計算する。本記事のように5〜10年分の履歴を見ると、単年の動きと長期の傾向が別物になることがわかります。
より精密な現在価値を知りたい場合は、査定を依頼するのが確実です。公示地価はあくまで標準地ベースの公的指標で、個別物件の間口・接道・形状までは反映されません。土地の売却や相続を検討されている方は、お気軽にご相談ください。
データ出典・集計条件
- 出典: 国土交通省「地価公示」(公示地価・標準地)データ。基準日2024年1月1日。
- 対象: 東京都3,516地点(うち3,481地点が2023・2024両年の価格を持ち前年変動率を算出可能)。過年度価格履歴(price_by_year: 1995〜2024年)を使用。
- 前年変動率: (当年価格 / 前年価格 − 1) × 100。両年とも価格が0より大きい地点のみ集計。
- CAGR: power(当年価格 / 10年前価格, 1/10) − 1。両年とも価格>0の地点のみ。
- 価格帯別: current_price(円/㎡)の五分位で分類。
- 集計単位: 中央値が主軸。平均は算術平均を補助指標として明記。
- 価格単位: 円/㎡(万円/㎡に換算して併記)。1㎡≈0.3025坪で坪換算。
- 区市別ランキングは地点数20以上(n>=20)の区市のみ掲載。