売る・手放す2024年4月 相続登記義務化対応公開日: 2026年8月16日

未登記建物を相続して売却するには?表題登記の費用と「仲介売却・更地売却・専門買取」3つの出口を徹底比較

建物の登記簿(表題部)が存在しない「未登記建物」を相続した場合、売却には表題登記と所有権保存登記の手続きが前提になります。本記事では、登録免許税と士業報酬の費用内訳、建築確認済証などを紛失した場合の代替証明資料の集め方、増築部分が未登記の場合の対応、そして解体して更地として売る場合の固定資産税負担の変動まで、公的資料に基づいて整理します。

1. 未登記建物がそのままでは売れない理由 ― 表題登記・保存登記・移転登記の構造

不動産登記法上、建物の登記は①建物の所在・種類・構造・床面積を示す「表題登記」、②誰が所有者かを示す「所有権保存登記」、③売買や相続で所有者が変わる「所有権移転登記」の3層構造になっています。建物の所有者は表題登記を申請する義務を負っており(不動産登記法第36条)、所有権の登記は表題登記がなければつけられません。このため、戦前〜昭和30年代ごろに建てられ建築後一度も登記されていない建物や、登記済みの母屋に未登記の増築がある建物は、買主への所有権移転登記ができず、一般の仲介取引の対象にできません。

📌 2024年4月からの相続登記義務化との関係

令和6年(2024年)4月1日に施行された相続登記等の申請義務化では、相続により不動産を取得した相続人は、相続の開始を知った日から3年以内に登記を申請しなければならず、正当な理由がないのに申告を怠ると10万円以下の過料の対象となります。取得した建物が未登記の場合、相続人は「所有権の保存の登記」を申請する形で義務を果たすこととされており、その前提として表題登記が必要です(法務省「相続登記の申請義務化について」)。

2. 出口別 費用・手取りシミュレーター

「①表題登記+保存登記をして仲介売却」「②解体して更地売却」「③未登記のまま専門買取」の3案について、売却価格・評価額・坪数・士業報酬想定を入力すると、各出口の手取りと内訳(計算過程)が表示されます。

TOOL登録免許税は法定・士業報酬は見積もり前提

未登記建物の出口別 費用・手取りシミュレーター

「登記して仲介売却」「解体して更地売却」「未登記のまま専門買取」の3案について、表題登記・保存登記・解体・税負担を含む手取りを計算過程つきで比較します。

未登記建物のまま古家付きとして市場に出る場合の想定額

解体して土地単体で売る場合の想定額

固定資産税評価証明書の「価格」を入力(0.4%が登録免許税)

木造の坪単価目安 4.5万円/坪で計算

測量の必要範囲・地域により変動。見積もりで確定

相続関係を証明する戸籍収集を依頼する場合は別途加算

再販リスク・登記費用が価格に織り込まれる分、相場より低くなる傾向

特例解除で課税標準は6分の1→全額(最大6倍)

更地保有中は特例解除後の税額が発生

SIMULATION RESULT

3つの出口の手取り比較(諸費用・譲渡所得税込み)

プランA ・ 手取り最大

登記して仲介売却(表題登記+保存登記→媒介契約)

手取り概算1,152 万円

建物+土地の売却価格1,500 万円
表題登記(土地家屋調査士報酬/登録免許税は非課税)▲ 12 万円
所有権保存登記(司法書士報酬+登録免許税 評価額×0.4%=0万円)▲ 6 万円
仲介手数料(上限: 価格×3%+6万円+税)▲ 56 万円
譲渡所得税(概算取得費5%・長期20.315%)▲ 274 万円
プランB

解体して更地売却(建物の表題登記は不要)

手取り概算786 万円

土地のみの売却価格1,200 万円
解体費(木造目安 4.5万円/坪 × 30坪/譲渡費用に算入可)▲ 135 万円
仲介手数料(上限: 価格×3%+6万円+税)▲ 46 万円
固定資産税増加分(住宅用地特例解除・約6か月分)▲ 38 万円
譲渡所得税(概算取得費5%・長期20.315%)▲ 195 万円
プランC

未登記のまま専門買取(登記手続きは業者側が前提)

手取り概算726 万円

買取価格(想定売却価格×60%)900 万円
仲介手数料・登記費用(買取価格に織り込まれている前提の目安)▲ 0 万円
譲渡所得税(概算取得費5%・長期20.315%)▲ 174 万円

※譲渡所得税は概算取得費(売却価格の5%)・長期譲渡(税率20.315%)の簡易試算です。相続空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例、実額取得費を使う場合は税額が変わります。士業報酬は依頼先・案件により変動するため、実際の見積もりで確定してください。

3. 表題登記・保存登記にかかる費用の内訳(登録免許税と士業報酬)

相続した未登記建物を仲介売却する場合の費用は、大きく「国に納める登録免許税」と「士業への報酬」に分かれます。登録免許税は登録免許税法別表第1で法定されており、表題登記には登録免許税がかからない点が最初の押さえどころです。

手続登録免許税(法定)主な依頼先と報酬目安
表題登記(建物表示登記)非課税土地家屋調査士(測量を含む同法第2条の独占業務)。報酬は案件ごとの見積もり制で、建物の新規表題登記はおおむね8万〜15万円程度の水準が実務上の目安とされる
表題部変更登記(増築等)非課税土地家屋調査士。既存登記との突合・測量が必要で、新規表題登記と同程度の報酬水準が目安
所有権保存登記(相続)建物の固定資産税評価額 × 0.4%司法書士。戸籍収集を含む相続登記一式の報酬はおおむね5万〜10万円程度の水準が実務上の目安とされる
所有権移転登記(売買)建物の固定資産税評価額 × 2.0%買主負担となるのが通常の取引実務(売主の直接負担ではない)

※登録免許税の出典: 登録免許税法別表第1。士業報酬は自由価格制度であり、建物の形状・敷地条件・相続関係の複雑さ・地域により変動するため、実際には複数の事業者から見積もりを取って確定します。

💰 費用感の例(固定資産税評価額100万円・木造30坪の建物)

表題登記の登録免許税は0円、保存登記の登録免許税は100万円 × 0.4% = 4,000円。つまり法定費用の負担はごく小さく、費用の実体は土地家屋調査士・司法書士への報酬(合計でおおむね15万〜25万円程度の目安)です。古い建物で評価額が低い場合ほど、税額より士業報酬の比重が大きくなります。

4. 建築確認済証・引渡証明書がない場合の「代替証明資料」の集め方

表題登記の申請では、申請建物が「建築物であること」を証明する登記原因証明情報が必要です。通常は建築確認済証や建築基準法の検査済証を使いますが、古い未登記建物ではこれらが紛失している・そもそも存在しないケースが多くあります。この場合、法務省「建物の表題部の登記に当たっての建築物の証明について」の取扱いに沿って、次のような資料の組み合わせで建築物の証明を行えます。

① 固定資産税評価証明書

市町村の固定資産税課で交付される「固定資産税評価証明書(固定資産税課税台帳登録証明書)」。相続人は戸籍等で相続関係を証明すれば取得できます。課税台帳に建物の記載があれば、所在・種類・構造・床面積の公的な傍証になります。

② 工事担当者(工事人)の証明書類

建築当時の工事請負契約書、工事完了引渡証明書、設計図面など、工務店など工事施行者が作成した書類。施工者が存続している場合は、証明書の新規作成を依頼できることもあります。

③ ライフライン供給開始の証明

電気・ガス・水道の供給開始(開栓)を証する書類。供給開始時期から建築時期の傍証資料として使われます。電力会社・ガス事業者・水道局への開示請求で取得を確認できます。

④ 市町村長等の作成する証明

固定資産税課税台帳の記載事項に関する証明など、市町村長が作成する書類も法務省の取扱い上、建築物の証明資料として位置づけられています。

DOCUMENT CHECK FLOW

建築書類がなくても表題登記できるか 手元資料チェック

確認済証を紛失していても、法務省「建物の表題部の登記に当たっての建築物の証明について」に沿った代替資料で申請できます。手元にあるものをタップしてください。

資料 1

建築確認済証(または建築基準法の検査済証)が手元に残っていますか?

市町村の建築指導課で「再交付・閲覧」ができる場合もあります。

資料 2

工事請負契約書・工事完了引渡証明書など、工事施行者(工務店等)が作成した書類が残っていますか?

法務省の取扱いでは工事施行者の書類による証明が認められています。

資料 3

市町村から「固定資産税評価証明書(課税台帳登録証明書)」を取得できそうですか?

相続人であれば、戸籍等で相続関係を証明して取得できます。

資料 4

電気・ガス・水道の「供給開始(開栓)」を証明する書類が取得できそうですか?

供給開始時期から建築時期の傍証を得る補助資料として使われます。

資料 5

母屋のほかに、増築部分や離れなど「登記されていない建物部分」がありますか?

ある場合は表題部変更登記(不動産登記法第37条)が併せて必要です。

5つの質問すべてに回答すると、表題登記に使える証明ルートと増築部分の対応要否が表示されます。

5. 母屋は登記済み・増築部分が未登記の場合の「表題部変更登記」

昭和の住宅で多いのが、登記済みの母屋に後から増築した部分(2階建てへの改築、居室の増築、離れの新設など)が未登記のまま残っているケースです。表題部(床面積・構造等)に変更が生じた場合、不動産登記法第37条により変更があった日から1か月以内に表題部変更登記を申請する義務があります。未登記の増築を放置したまま売却すると、登記簿の床面積と実際の面積が一致しない状態での取引となり、買主側からの契約不適合責任(民法第562条・563条)の主張に発展するリスクがあります。

⚠ 増築未登記の実務ポイント

  • 手続きは新規表題登記と同じく土地家屋調査士の業務で、既存登記との突合と増築部分の測量が必要
  • 新規表題登記(母屋自体が未登記の場合)と表題部変更登記(増築のみ未登記の場合)は申請書類の形式が異なるため、まず全部事項証明書(登記簿)で現状を確認
  • 建築確認を経ていない増築の場合、建築基準法上の経過措置・既存不適格の状態に該当するか建築指導課で確認が必要になることがある

6. 3つの出口の費用対効果 ― 仲介売却・更地売却・専門買取

相続した未登記建物の処分方法は、大きく3つに整理できます。いずれも費用・期間・税負担の性質が異なるため、手取り額と発生時期の両面で比較する必要があります。

出口主な費用税負担の変動特徴
① 登記して仲介売却表題登記・保存登記(士業報酬+登録免許税0.4%)、仲介手数料(宅地建物取引業法第46条の2の上限: 価格×3%+6万円+税)譲渡所得税は売却益に対して発生。相続空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例の適用可否は別途判定一般市場に出品でき、相場に近い価格での売却を期待しやすい。登記手続き(1〜2か月程度)が必要
② 解体して更地売却解体費(木造の坪単価はおおむね4.0万〜5.5万円/坪の相場帯。解体費用の詳細はこちら)、土地の仲介手数料建物滅失で住宅用地特例(地方税法第349条の3)が外れ、200㎡以下の土地は固定資産税の課税標準が6分の1→全額(最大約6倍)、都市計画税は3分の1→全額(約3倍)。解体から売却までの期間分が追加負担建物の表題登記は不要。古い建物の魅力が低い・再販ニッチな立地では更地の方が買い手がつきやすいことがある一方、解体費の初期支出と税増加分を回収できる売価かが分岐点
③ 未登記のまま専門買取仲介手数料・登記費用は売主負担なし(買取価格に登記・再販リスクが織り込まれる前提)譲渡所得税は売却益に対して発生。価格が低い分、課税譲渡所得も小さくなる傾向最短での現金化と手続きの委託が可能。買取価格は仲介相場と比較して低めに設定されるのが一般的な実務

📈 更地売却時の固定資産税シミュレーション(住宅用地特例解除)

例として、住宅用地特例適用中の土地の固定資産税が年15万円(200㎡以下の小規模宅地等)の場合、解体により建物が滅失すると課税標準が6分の1から全額に戻るため、土地の固定資産税は最大で年約90万円(6倍)に増加します(都市計画税も3分の1から全額に)。解体から売却完了まで6か月かかる場合の追加負担は約37.5万円(増分75万円の半年分)となり、この額が更地売却案のコストに加算されます。

7. 相続から売却までの手順(書類チェックリスト付き)

現状把握から表題登記、保存登記、媒介契約・所有権移転登記までの流れを、各段階の確認事項とあわせて整理しました。

実務フロー現状確認から売却実行まで

未登記建物を相続から売却まで進める「5ステップ手順」

現状把握・出口の決定、表題登記(建築物の証明)、保存登記、媒介契約から所有権移転までの手順と必要資料を整理しました。

01
現状把握

登記・税務・建物情報の確認

建物の登記状況(登記がない=未登記か、登記済みでも増築部分が未登記か)を登記備蓄データ・固定資産税課税台帳で確認します。固定資産税評価証明書は市町村で誰でも取得できるわけではなく、原則として所有者(相続人)や相続関係を証明する方が取得します。

📌 実務上の重要ポイント
  • 固定資産税評価証明書(課税台帳登録証明書)の取得可否を市町村窓口で確認
  • 建物の建築時期・構造・床面積の見当をつける(母屋・増築・離れの別)
  • 水道・電気・ガスの名義と供給開始時期を確認
実務チェックリスト(クリックで確認完了)
02
方針決定

3つの出口(仲介売却・更地売却・専門買取)の費用対比較

建物の状態・立地・売却希望時期から、①表題登記・保存登記をして仲介売却、②解体して土地のみ売却、③未登記のまま専門買取、のいずれで進めるかを費用対効果で比較します。本記事のシミュレーターで3案の手取り比較ができます。

📌 実務上の重要ポイント
  • 仲介売却: 表題登記+保存登記のコストが発生(調査士・司法書士への報酬)
  • 更地売却: 解体費+住宅用地特例解除による固定資産税増加分を織り込む
  • 専門買取: 登記手続きを業者側で前提にしているか、価格に反映されているか確認
💡 解体して土地売却する場合、空き家の3,000万円特別控除(更地渡し)や取得費加算の特例との関係も選択要素になります。
03
表題登記

土地家屋調査士への依頼と建築物の証明(1〜2か月目安)

表題登記の申請(測量を含む)は土地家屋調査士法第2条に基づく土地家屋調査士の業務です。建築確認済証等がない場合は、法務省の取扱いに沿って固定資産税評価証明書・工事請負契約書・工事完了引渡証明書・水道等の供給開始証明などの代替資料で「建築物の証明」を行います。

📌 実務上の重要ポイント
  • 建築確認済証・検査済証があればそれを提出
  • なければ固定資産税評価証明書+工事施行者の書類等の組み合わせで証明
  • 増築部分がある場合は表題部変更登記として同一申請で対応
⚠ 注意: 表題登記のみでは所有権の登記(保存登記)は完了しません。売却や義務化対応には次の保存登記が必要です。
04
保存登記

相続を原因とする所有権保存登記(司法書士への依頼)

表題登記完了後、相続人(全員共有または遺産分割で決めた相続人)名義の所有権保存登記を受けます。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%です。司法書士への報酬は別途かかります。

📌 実務上の重要ポイント
  • 必要書類: 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍・住民票、固定資産税評価証明書
  • 相続登記義務化(令和6年4月施行)により、相続開始を知った日から3年以内の申請が必要
  • 義務違反時は正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象
05
売却実行

媒介契約・売買契約・所有権移転登記

保存登記が完了すれば、一般の仲介取引で売却できます。仲介手数料の上限は宅地建物取引業法第46条の2に基づき「売却価格×3%+6万円+消費税」(400万円超の場合)です。所有権移転登記(登録免許税2.0%)は買主負担が一般的です。

📌 実務上の重要ポイント
  • 売却損益の確定申告(譲渡所得税)を忘れずに。3,000万円特別控除や取得費加算の適用可否を税理士・税務署に確認
  • 解体更地売却の場合は滅失登記と住宅用地特例解除のタイムラグを管理

📋 表題登記の「建築物の証明」で使われる主な資料(法務省取扱い)

  • 建築確認済証・建築基準法の検査済証(原本または写し)
  • 固定資産税評価証明書(固定資産税課税台帳登録証明書)
  • 工事請負契約書・工事完了引渡証明書など工事施行者が作成した書類
  • 電気・ガス・水道の供給開始(開栓)を証する書類
  • 建築士・工事監理者等による建築物の証明書(登記原因証明情報として作成)

8. 未登記建物の相続・売却 よくある質問

相続登記義務化の対象範囲、代替証明資料、増築未登記、解体時の税負担など、現場で寄せられる質問に回答します。

Q&A実務の疑問と落とし穴

未登記建物の相続・売却「よくある質問(FAQ)」

相続登記義務化の対象、建築書類がない場合の代替資料、増築未登記、解体時の税負担まで実務の疑問に回答します。

A

なります。相続等により不動産を取得した相続人は、相続の開始を知った日から3年以内に登記を申請する義務があります(不動産登記法第76条の2)。取得した建物が未登記(所有権の登記がない)の場合は、相続人が「所有権の保存の登記」を申請する形で義務を果たすこととされており、保存登記の前提として表題登記(建物表示登記)が必要です。正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

📌 要点: 未登記建物も義務化の対象。表題登記→所有権保存登記の順で3年以内に

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