マンションの構造 RCとSRCの違い
中古マンション選びで「RC」「SRC」という表記を見かけることがあります。本稿で比較する両者の定義を先に示します。
- RC(鉄筋コンクリート造): 鉄筋を組んだ上にコンクリートを流し込む構造。コンクリートが主役。
- SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造): 鉄骨の骨組み + 鉄筋 + コンクリートを組み合わせた構造。鉄骨で柱・梁を補強する。
一般的にSRCは高層物件や都市部の大型物件に使われる傾向があり、建設コストが高めとされます。ただし本稿が問うのは「構造そのものの優劣」ではなく、実際の成約データでRCとSRCの坪単価が築年とともにどう動くか、という一点です。構造の技術的な優劣を断定する立場にはありません。
集計の前提を先に示します。単位はすべて坪単価の中央値、価格100万円未満の取引は除外、構造はRCとSRCの2種のみ(鉄骨・木造等は少数で除外)、各粒度で N≥30 の組合せのみを採用しました。期間は2005年第1四半期〜2025年第4四半期(21年・82期)、中古マンション等限定です。
データから見る構造別の坪単価 — 新築ではほぼ同じに見える
成約データで構造別の構成比を見ると、RCが 75.6%(N=271417)、SRCが 23.4%(N=83874)です。市場の大半はRCで、SRCは少数派です。
| 構造 | 構成比 | N |
|---|---|---|
| RC(鉄筋コンクリート) | 75.6% | N=271417 |
| SRC(鉄骨鉄筋コンクリート) | 23.4% | N=83874 |
次に新築域(築0-10年)の坪単価中央値を並べます(単位: 万円/坪)。
| 構造 | 築0-10年の坪単価中央値 | N |
|---|---|---|
| RC | 255.6 | N=54713 |
| SRC | 283.4 | N=656 |
SRCの方が 283.4 と高い数字が出ますが、SRCの新築域 N=656 は少数です。RCとSRCの新築時の価格帯は近接しており、築浅の段階では構造による大きな差はデータからは見えません。
減価カーブの違い — 築年を重ねるとRCとSRCで何が起きるか
築年を重ねると、両者とも坪単価中央値は下落します。RCとSRCの坪単価中央値を築年帯別に並べます(単位: 万円/坪)。
| 築年帯 | RC 坪単価中央値 | RC N | SRC 坪単価中央値 | SRC N |
|---|---|---|---|---|
| 築0-10年 | 255.6 | N=54713 | 283.4 | N=656 |
| 築11-20年 | 190.6 | N=76009 | 188.9 | N=4285 |
| 築21-30年 | 132.2 | N=58010 | 143.3 | N=27540 |
| 築31-40年 | 74.4 | N=38015 | 79.3 | N=21674 |
| 築41年超 | 60.6 | N=43997 | 99.2 | N=29385 |
新築時の水準を100とした「残価率」で形状を見ると、減価カーブの違いがくっきり出ます。
| 築年帯 | RC 残価率 | SRC 残価率 |
|---|---|---|
| 築0-10年 | 100 | 100 |
| 築11-20年 | 74.5 | 66.7 |
| 築21-30年 | 51.7 | 50.6 |
| 築31-40年 | 29.1 | 28.0 |
| 築41年超 | 23.7 | 35.0 |
築0-10年から築31-40年までは、RCとSRCの残価率はほぼ並走します(むしろ築11-20年〜31-40年ではSRCの方がわずかに下)。ここまでは「構造で減価の速さが大きく違う」とは言えません。
築41年超で起きる「SRCの反転」 — データが示す結果
曲線がはっきり分かれるのは築41年超です。
- SRC: 築31-40年の 79.3 から、築41年超の 99.2 へ上昇(+25.2%、N=21674 → N=29385)。残価率は28.0から35.0へ跳ね上がります。
- RC: 築31-40年の 74.4 から、築41年超の 60.6 へ下落(-18.5%、N=38015 → N=43997)。残価率は29.1から23.7へ、下落が継続します。
結果、築41年超での「SRCプレミアム」=(SRC坪単価 − RC坪単価)/ RC坪単価 は +63.6% に達します。新築域では両者の差は小さく、築31-40年でも数%の差だったものが、築41年超で一気に開く構造です。
地域ごとの頑健性も確認します。市×築年帯のペア(RC/SRC 各 N≥30)でSRCがRCより高い割合は 81.1%(N=530)。築41年超に絞って都道府県ペア(各 N≥30)で見ると 95.2%(N=21)と、ほぼ全県でSRCがRCを上回ります。
| 地域 | 築41年超 SRC坪単価中央値 | 築41年超 RC坪単価中央値 | N |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 209.4 | 169.0 | SRC N=10195 / RC N=10539 |
東京都ではSRCが 209.4、RCが 169.0 と、首都圏でも差が開きます。奈良県ではSRCプレミアムが +116.7%(RC N=601 / SRC N=84)、大阪府で +44.4%(RC N=5238 / SRC N=6514)と、関西圏で差が大きい傾向が見えます。
唯一、RCがSRCを上回ったのは沖縄県で -28.5%(RC N=43 / SRC N=36)ですが、こちらはNが小さく(各 N≥30 を満たす程度)、安定した読み方は控えます。
生き残りバイアスについて — なぜSRCが高いのか、構造の差だけではない
ここで誠実な注記を挟みます。「SRCの坪単価が築古で高い」を、ただちに「SRCが構造として優れるから」と結びつけるのはデータの読み過ぎです。理由は次のとおりです。
- SRCは残る物件に使われやすい: SRCは元々、都心の大型・高層物件など、立地や規模の良い物件に採用される傾向があります。築40年を超えても取引される=「市場に生き残る」のは、もともと資産性の高い物件が多く、構造だけの効果とは切れません。
- 取り壊し選別(生き残りバイアス): 築41年超で成約データに残っている物件は、取り壊されずに市場に出品された「生き残り」です。資産価値が低いと判断された物件は売却されずに解体 etc. で市場から消え、データに現れません。SRCで建てられた物件にこの「生き残り」が偏っていれば、SRCの坪単価中央値は見かけ上高くなります。
つまり本稿の数字が示しているのは「SRCで建てられた建物に、築古でも資産価値の持続性が見られる(データ上)」という事実であって、「SRCの構造そのものが資産価値を生む」という因果ではありません。立地・規模・維持管理状態などの交絡が分離できていません。
この点を踏まえても、築41年超でSRCの残価率が28.0から35.0へ反転する構造はデータ上の事実であり、中古マンション選びの参考材料としては意味を持ちます。
中古マンション選びの実務 — このデータをどう使うか
本稿の数字はすべて過去データの構造であり、個別物件の成約価格を約束するものではありません。ただ、データから読める点を整理します。
- 築浅では構造の差は小さい: 築0-10年〜31-40年では、RCとSRCの坪単価中央値は近接・並走。新築時の構造選びだけで資産価値を語る根拠は薄い。
- 築41年超で曲線が分かれる: SRCだけが反転上昇(+25.2%)、RCは下落継続(-18.5%)。ただし生き残りバイアスの影響を含む。
- 地域ごとに確認する: 都道府県ペアでSRC優位は95.2%(N=21)と頑健だが、沖縄などNの小さい地域では逆転もありうる。
築古の中古マンションを検討する際は、構造だけでなく立地・管理状態・修繕履歴を含めて判断することが実務上の基本です。構造別の傾向は、複数の比較軸のうちの一つとして参照するのが妥当な位置づけです。
ご自身の物件(RC・SRC問わず)の築年と立地を踏まえた価格見立てを知りたい場合は、無料査定を依頼 からご相談ください。物件ごとの条件で、成約データに基づく目安をお出しできます。また、地域別の値下がり構造を確認したい場合は、値下げマップ(T-001) もご参照ください。
集計条件: 出典=国土交通省「不動産取引価格情報・成約価格情報」/期間=2005年第1四半期〜2025年第4四半期(21年・82期)/種別=中古マンション等(戸建て・宅地は除外)/price_category=成約価格情報のみ/単位=坪単価の中央値/価格100万円未満は除外/構造=RCとSRCの2種のみ/築年帯=築0-10年・11-20年・21-30年・31-40年・41年超(2025年基準)/残価率(%)=当該築年帯の坪単価中央値 / 新築(0-10年)の坪単価中央値 × 100/SRCプレミアム(%)=(SRC坪単価中央値 − RC坪単価中央値) / RC坪単価中央値 × 100/building_year は パースバグ修正後の正(西暦)/各粒度で N≥30 の組合せのみを採用。
出典: 国土交通省 不動産取引価格情報・成約価格情報