中古住宅の買取相場とは — まず基礎
「中古住宅の買取相場」を検索する人は、「自分の家がいくらで買い取ってもらえるか」を知りたいのですが、ここで押さえておくべき前提があります。買取価格の公的データベースは存在しません。 国土交通省が公開しているのは、実際に売買が成立した価格(成約価格情報)と、取引価格情報(不動産取引価格情報)です。買取業者が個別の物件に対して提示する「買取価格」は、これらの公的データに含まれません。
では、本稿は何を材料にするのか。成約価格情報(実際の成立価格)を市場価格の参考値として使います。買取価格は一般的に、市場で実際に売買された価格(成約価格)より低い水準になります。その理由は、買取業者が再販までの修繕費・流通コスト・在庫リスクを負い、その分を価格に織り込むからです。つまり、成約相場を把握すれば、「買取相場の上限に近い目安」が分かります。本稿はこの成約相場を、成約データN=248,094件で整理します。
中古住宅の成約相場はいくらか(全国・24.8万件)
国土交通省「成約価格情報」の宅地(土地と建物)= 中古戸建てデータを集計すると(成約価格情報・2021年〜2025年・全国・N=248,094件)、全国中央値は2,800万円、坪単価中央値は642,790円/坪でした。
中央値だけでなく、分布を見ることで「自分の家がどのあたりに位置するか」の目安が立ちます。
| 分位点 | 総額 |
|---|---|
| 下位10%(P10) | 850万円 |
| 下位25%(P25) | 1,700万円 |
| 中央値(P50) | 2,800万円 |
| 上位25%(P75) | 3,900万円 |
| 上位10%(P90) | 5,300万円 |
価格帯別で見ると、最も多いのは**3,000万円〜4,000万円帯の53,014件(21.4%)**です。一方、1,000万円未満の物件も30,247件(12.2%)あり、全国には幅広い価格帯の中古住宅が存在します。坪単価で見ると、P25が356,007円/坪、P75が1,101,927円/坪と、中央値の上下で大きく開きがあります。中古住宅の相場は、「全国いくら」という単一の数字では語れない幅を持っています。
直近5年の中古住宅価格の推移(2021年〜2025年)
成約価格の年別推移を見ると、緩やかな上昇が続いています。
| 年 | N | 総額中央値 | 坪単価中央値 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 41,250 | 2,600万円 | 606,059円 |
| 2022年 | 41,215 | 2,700万円 | 617,081円 |
| 2023年 | 42,705 | 2,700万円 | 623,375円 |
| 2024年 | 45,937 | 2,700万円 | 619,835円 |
| 2025年 | 76,987 | 3,000万円 | 719,494円 |
総額中央値は2021年の2,600万円から2025年の3,000万円へ**+15.4%上昇しました。坪単価も606,059円/坪から719,494円/坪へ+18.7%**上がっています。2021年〜2023年は2,600万円〜2,700万円で推移したのち、2025年に3,000万円へジャンプしています。ただし2025年の件数(N=76,987)は前年(N=45,937)から急増しており、サンプル構成の変化が価格上昇に影響している可能性がある点には注意が必要です。
築年別に見る中古住宅の価格水準
買取相場を考える上で最も重要な変数の一つが築年です。築年帯別に成約中央値を見ると、明確な価格低下のカーブが読めます。
| 築年帯 | N | 総額中央値 | 坪単価中央値 |
|---|---|---|---|
| 新築 | 2,190 | 4,200万円 | 1,259,345円 |
| 0-5年 | 70,199 | 3,500万円 | 919,871円 |
| 6-10年 | 19,185 | 3,500万円 | 886,552円 |
| 11-15年 | 16,701 | 3,200万円 | 800,347円 |
| 16-20年 | 18,894 | 2,900万円 | 721,263円 |
| 21-30年 | 41,121 | 2,300万円 | 563,207円 |
| 31年超 | 66,945 | 1,300万円 | 283,352円 |
新築の4,200万円から築31年超の1,300万円まで、総額で**-69.0%の減価です。築0-5年を基準にしても、31年超までに3,500万円から1,300万円へ-62.9%**下がります。特に築20年を超えると低下ペースが加速し、21-30年帯で2,300万円、31年超で1,300万円へと半減に近い落ち込みを見せます。買取査定でも築年は主要な評価項目であり、「築年が進むほど成約相場が下がる」というデータ上の傾向を知っておくことは、提示された価格の妥当性を判断する材料になります。
成約と取引価格の乖離が教える相場の構造
不動産取引価格情報と成約価格情報を比較すると、戸建て特有の構造が見えます。
| 年 | 成約坪単価 | 取引坪単価 | 成約が取引より高い割合 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 606,059円 | 482,556円 | +25.6% |
| 2025年 | 719,494円 | 465,815円 | +54.5% |
中古戸建てでは、成約坪単価が取引坪単価を一貫して上回っています。これはマンション(取引坪単価が成約坪単価を上回る)とは逆のパターンです。取引価格情報は公開希望価格を含む幅広いデータ(N=2,085,160件・不動産取引価格情報・2005年〜2025年)で、地方・小規模物件の比重が高い一方、成約価格情報は都市部・一定規模以上の物件の報告が中心です。このデータ構成の違いが乖離の主因と考えられます。不動産取引価格情報の全期間プール中央値は2,500万円、465,815円/坪でした。
都道府県別の中古住宅相場ランキング
都道府県別の成約中央値(2021年〜2025年・N≥30)を見ると、地域格差が鮮明です。
上位:
| 都道府県 | N | 総額中央値 | 坪単価中央値 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 29,093 | 4,800万円 | 1,608,816円 |
| 沖縄県 | 530 | 4,000万円 | 888,787円 |
| 神奈川県 | 26,758 | 3,900万円 | 1,051,841円 |
| 愛知県 | 15,199 | 3,000万円 | 661,157円 |
下位:
| 都道府県 | N | 総額中央値 | 坪単価中央値 |
|---|---|---|---|
| 島根県 | 105 | 1,400万円 | 223,626円 |
| 秋田県 | 792 | 1,400万円 | 202,650円 |
| 山梨県 | 419 | 1,500万円 | 239,140円 |
東京都の4,800万円に対し島根県・秋田県は1,400万円で、坪単価は東京都1,608,816円/坪に対し秋田県202,650円/坪と大きく開いています。中古住宅の相場は地域によって大きく異なり、「全国の数値」だけでは自分の物件の相場は見えません。
2021年から2025年の変化率を見ると、45都道府県中35都道府県(77.8%)で上昇、10都道府県(22.2%)で下落でした。上昇率上位は岩手県+70.0%(1,500万円→2,550万円)、徳島県+37.5%(1,600万円→2,200万円)、栃木県+29.4%(1,700万円→2,200万円)。下落率上位は和歌山県-42.1%(1,900万円→1,100万円)、富山県-15.8%(1,900万円→1,600万円)、青森県-12.5%(1,600万円→1,400万円)。全国が一斉に上がるわけではなく、地域によって向きが分かれています。
東京圏と地方で見る中古住宅相場の格差
東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)と地方(それ以外)で分けると、水準も上昇幅も違います。
| 地域 | N | 総額中央値 | 坪単価中央値 |
|---|---|---|---|
| 東京圏 | 90,660 | 3,700万円 | 1,012,397円 |
| 地方 | 157,434 | 2,400万円 | 493,402円 |
東京圏の3,700万円に対し地方は2,400万円で、坪単価も東京圏1,012,397円/坪に対し地方493,402円/坪と大きく異なります。2021年→2025年の推移を見ると、東京圏は総額3,300万円→3,900万円(+18.2%)、坪単価897,286円/坪→1,091,679円/坪(+21.7%)。一方、地方は総額2,300万円→2,400万円(+4.3%)、坪単価480,843円/坪→499,901円/坪(+4.0%)とほぼ横ばいです。価格上昇は東京圏に集中しており、地方では微増にとどまっています。
土地面積別に見る中古住宅の価格帯
戸建ての場合、土地面積が総額と坪単価の双方に影響します。
| 面積帯 | N | 総額中央値 | 坪単価中央値 |
|---|---|---|---|
| 50-100㎡ | 52,452 | 3,000万円 | 1,322,314円 |
| 100-150㎡ | 81,429 | 3,100万円 | 843,544円 |
| 150-200㎡ | 52,362 | 2,600万円 | 514,235円 |
| 200-300㎡ | 42,127 | 2,300万円 | 336,817円 |
総額は100-150㎡帯で3,100万円と最も高く、面積が大きくなるほど下がる傾向にあります。これは、広い土地は地方や郊外に多く、地価が低いエリアに分布しているためです。坪単価で見ると、50-100㎡帯の1,322,314円/坪に対し200-300㎡帯は336,817円/坪と、面積あたり単価は小さい面積ほど高いという傾向が読めます。構造別では、木造が2,800万円・661,157円/坪(N=217,183件)、鉄骨造が2,700万円・556,764円/坪(N=22,169件)と、木造が中古住宅の主流を占めています。
2025年の四半期別で見る足元の方向感
2025年を四半期別に分解すると、年內の足元の動きが分かります。
| 2025年 | N | 総額中央値 | 坪単価中央値 |
|---|---|---|---|
| 第1四半期 | 18,338 | 3,000万円 | 734,618円 |
| 第2四半期 | 19,381 | 3,000万円 | 716,255円 |
| 第3四半期 | 19,375 | 3,000万円 | 723,140円 |
| 第4四半期 | 19,893 | 3,000万円 | 708,383円 |
総額中央値は4四半期とも3,000万円で安定しています。坪単価は第1四半期の734,618円/坪をピークに第4四半期の708,383円/坪へと緩やかに低下していますが、変動幅は小さく、明確な下落基調とは言えません。四半期ベースでは高位での安定推移という状況です。
自分の中古住宅の買取相場を調べる実務的な読み方
ここまで見てきたデータを、自分の物件にどう当てはめるか。実務的な手順は以下の通りです。
第1步:成約相場を大まかな市場価格の目安にする。 自分の物件の都道府県・築年帯・面積帯に該当する成約中央値を探し、出発点とします。例えば、東京都・築20年・100-150㎡の中古住宅なら、東京都全体の3,900万円台(神奈川県に次ぐ水準)と築16-20年帯の2,900万円を掛け合わせて、おおむね2,900万円〜3,700万円の範囲が成約相場の参考値になります。詳しくは東京都の中古住宅相場もご参照ください。
第2步:買取価格は成約相場より低くなる前提で読む。 買取業者は再販までの修繕費・流通コスト・在庫リスクを負うため、成約価格(市場で実際に売買された価格)に対してマージン分が控除されます。その具体率は物件ごとに異なり、公的データで示すことはできません。複数の買取業者・不動産会社に査定を依頼し、提示された価格が成約相場と照らして妥当かを判断することが重要です。
第3步:データの限界を理解する。 本稿の数値は中央値であり、個別物件の状態(間取り・接道・騒音・瑕疵の有無など)は反映されていません。また、Nが小さい都道府県(沖縄県530件・島根県105件など)では、サンプルの偏りが中央値に影響する可能性があります。データは「相場の枠組み」を知るためのものであり、個別の査定額を確定するものではありません。
自分の中古住宅の相場を具体的に知りたい方は、査定フォームからご相談ください。 所在地・築年・面積などの基本情報をお知らせいただければ、成約データに基づく参考相場と査定額をご案内します。
データ出典・集計条件
- 出典: 国土交通省「不動産取引価格情報」「成約価格情報」(不動産取引価格情報取得システム)
- 対象: type='宅地(土地と建物)'(中古住宅=戸建て・土地と建物の一体的取引)
- 成約価格情報の集計期間: 2021年第1四半期〜2025年第4四半期(N=248,094件)
- 不動産取引価格情報の集計期間: 2005年第3四半期〜2025年第4四半期(N=2,085,160件)
- 価格は中央値(median)で集計。算術平均は使用していない
- total_price・tsubo_price がNULLの行は除外
- 坪単価 = tsubo_price(円/坪)、総額 = total_price(円)
- 買取価格の公的データは存在しない。本稿の成約相場は市場価格の参考値であり、買取価格を確定するものではない